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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇五話 新任の先生に会いました


 生徒会にさっそく挨拶に行きますと、私の席が生徒会長となっていて大変慌てたのですが、エイプリルフールでした。

 そうでしたそうでした。

 もの凄く焦ってしまいましたよ。


 蝶ヶ原君と山影君にやっと会うことができて、約束が守れなかったことを謝りました。二人は中等部から上がってきた新一年生です。

 中等部生徒会では会長と副会長でしたね。

「陽向先輩の考えのおかげで、今のところ壊さずにすんでいます」

「あ……名前」

「は、はい。皆さん名前で呼び合っているので、僕たちもと……だめでしょうか」

「ううん、だめじゃない。ちょっと新鮮だっただけなの」

 何となくおもはゆく感じて、笑って誤魔化します。

「壊さないのは良いけど、真由ちゃんに送るはずのファイルがボクのところへ届いていたよー。送り先の確認はきちんとね」

「は、はい! 芹会長」

 まだまだ練習しないとダメみたいですね、蝶ヶ原君。

 山影君はてきぱきと私の席の役名を直していますね。副会長とかかれたプレートを置きました。

 あぁ、副会長にとうとうなってしまいました。

「さぁ、陽向ちゃん。これからまた忙しくなるよ。体調には気をつけて、具合が悪くなったら言うこと」

「はい」

「それじゃ、副会長の初仕事ー。職員室に、これ届けてきてー」

「分かりました」

「あ、それなら僕が行きます」

 山影君が椅子から腰を浮かせて言ったので、座るように手で合図しました。

「顧問の先生への顔見せも兼ねているので、大丈夫ですよ」

「そうでしたか、分かりました」

 

 芹先輩から書類を受け取って職員室へと向かいます。

 

 職員室に入って顧問の後藤田先生に書類を渡し、挨拶をしていると見たことのない男性が悟さんと話しているのが見えました。

「後藤田先生、新しい先生が入ったんですか?」

「ん? あぁ、そうそう。今年は二人入ったよ。生物と……あと、国語の先生だね。生物の篠田先生は君たち二年の担任だよ」

 クラス発表前なので、誰が何組かは……まだ秘密なのでしょう。私が西福悟先生のクラスでないことは分かっていますが。


 始業式当日にクラスバッジが配られるので、新しい制服にはまだついていません。 


 二年生の担任でしたら、お世話になることもありますでしょう。ここは挨拶をしてから生徒会室に帰りましょう。

「入学式の用意で忙しいだろうけど、無理しない程度にがんばって」

「はい、ありがとうございます」

 後藤田先生のところから離れて、私は悟さんに近づきました。

「西福先生、おはようございます」

「あ、ひ……水崎、おはよう。体調も良さそうでなによりだ。生徒会に復帰おめでとう」

「ありがとうございます」

「えーと、始業式で紹介されるとは思うが、こちら新任の篠田三雲君だ。この子は生徒会副会長の水崎陽向」

「初めまして、水崎陽向です。今期生徒会の副会長を勤めさせていただきます。よろしくお願いします」

「これはご丁寧に。篠田三雲、三つの雲と書いて三雲。呼んで字のごとく、三人兄弟の末っ子です。年は今年で二十八歳。趣味は音楽鑑賞、ただいま彼女募集中ですが、生徒とはそういう関係になるつもりは一切ありません。若輩者ですが、どうぞよろしく」

「はぁ……」

 篠田先生、一息で言い切りました。慣れている感じですね。

「お前な……合コンじゃないんだから……」

 悟さんが呆れてます。

「西福先生は合コンとか行くんですか」

「え、そりゃ……その……」

「ふうん」

「い、いや、そのだな」

 慌てているところを見ると、行ったことあるんですね。ふむふむ、これは後で父に聞いてみましょう。

「仕事があるので、これで失礼します。新学期からよろしくお願いします」

 悟さんがわたわたしている間に、一礼して職員室を出ました。

 顔を上げた時に篠田先生と視線が合いましたが、かけているメガネが伊達であることに気づきました。

 レンズの周りにくすんだ銀で蔦のようなデザインフレームです。蔦というより茨に近いでしょうか。


 新学期が始まったら、色々と騒ぎになりそうな先生であります。



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