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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第四十八話 急なシフト変更は大変です

 


「水泳部じゃない? そうですか…ちょっと失礼」


 私は一言いってから携帯を取り出して蓮見先生に電話をかけました。

 水泳部じゃないのであれば、プールの授業がない日に水着を持ってきている理由がありません。それはもうすでに前日もしくは当日の朝から噴水に入るつもりであったということです。

 置き水着だなんて言い訳はさせませんよ。夏休みも間近に控えた一週間はプールの授業は無いのですから。


「もしもし蓮見先生ですか? プール清掃プラス反省文を書いてもらってください。お説教と説明は先生にお任せします。説明は後ほど」


 了承の返事をもらったので通話を切りました。

「あらあら、陽向さん厳しいわね」

「事故があってからでは遅いもの」

 あの噴水は結構深いのです。人間は水たまりの深さでも溺れるのですから油断はできませんよ。

「で、どんな腹筋だった?」

 そこへ戻しますか? 奈津子さん。

「何騒いでる? 席に戻って」

 丁度ガラガラと音をさせて黒板側のドアが開き、篠田先生が入ってきました。

「ほら奈津子さん、朝のホームルームの時間よ」

「残念」

 それぞれ席につくと遅れて速水君が入ってきました。風紀委員なので多少の遅れは見逃してもらえます。なにせ朝から仕事してますからね。今日遅れてきたのは多分昨日の噴水騒動のことで何かあったのでしょう。

 ホームルームが始まったので、小声で話しかけました。

「おはよう速水君」

「おはよう、陽向ちゃん」

「朝から風紀委員会議?」

「うん、見回る場所と時間の変更とかね。今日から変えるために朝と昼休みで決めちゃわないといけないから」

「仕事を増やしてしまったみたいでごめんね」

「陽向ちゃんのせいじゃないよ」

「そういえば、彼らは同じ中学の出身だってメールに書いてあったけど」

「うん。徳将中学っていう男子校みたいだよ」

 風紀委員長の説明によると中学の時はそれほど仲が良かったわけではなく、高校に入ってから同じ中学出身だということで仲良くなったのだとか。

 人間の心理って面白いですね。

 ちらっと篠田先生がこちらを見ましたけど、注意されることもなく朝のホームルームは終わりました。

「お昼休みも会議なんだったら、お昼困らない?」

「んー、シフトじゃない生徒におにぎりかサンドイッチを買ってきてもらうさ」

「何なら届けるよ? 先に連絡しておくから」

 生徒会特権でもありますが、サンドイッチの予約が可能です。生徒会の仕事が忙しくて学食へ食べに行けない時に時々使います。ただし人気商品は除かれますけどね。

「今回は私が発見したっていうのもあるし、色々風紀委員には迷惑をかけてるから」

「迷惑なんて…いつも差し入れしてくれるし、こっちこそいつもありがとう」


「はいはいはいはい、そこでイチャイチャしない」

「「してない」」

 パンパンと手を軽く叩きながら奈津子さんが言うものですから、声を速水君とそろえて言ってしまいました。

「はいはいはいはい。お昼なら私も暇だからお手伝いいたしますよー」

 奈津子さんがニヤニヤ笑いながら言って速水君に人数を聞きました。

「さすがに全部同じっていうのもなんだから、半々にしてもらおっか」

 コーヒーもつけてもらうことにして、さっそく電話をかけました。いつもの方が電話に出て応対してくれます。

「予約できました。四時間目が終わったら取りに行きますね」

 今回は緊急会議でしょうから、特別です。

「助かるよ陽向ちゃん」

 一応芹会長に報告のメールをして一時間目の授業の準備をしましたが、授業が終わって携帯を見ると芹会長から返信が来ていました。

「速水君」

「ん?」

「芹会長が、おにぎりのセットをさらに頼んでくれるそうです」

 携帯の文字を見せると速水君が少し驚いた顔をしました。

「さすが会長ってことかな」

 人数分のサンドイッチにプラス十個のおにぎりセット。


 何か意味があるんでしょうか。



前作でもあとがきなどに書きましたが

作中で使われる「携帯」「携帯電話」は特にどちらにも分類していません

ガラケーでもスマホでも、読んでいる方がお好きに想像していただきたいからです。あいまいに書いていますが(^^;)

五年後とかだとどうなっているんでしょうね…携帯電話業界って。

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