第四十六話 基準の違い?
「……どうかしましたかって」
「だって当たり前でしょう?」
私の言葉に何故か皆さん動きを止めてしまったのですけど。何故でしょう?
「ひ、陽向ちゃん?」
「はい?」
「腹筋は別に皆割れているわけではないよ」
「それくらい知ってるよ、速水君」
「え」
「でもスレンダーな人って皆腹筋割れているんでしょう?」
そこにいた全員が何故か声をそろえて「は?」と言いました。
「え? だって。父も龍矢さんも、それに香矢さんも腹筋割れてるよ?」
私の言葉に速水君がぎょっとした声をあげました。
「香矢さんも!?」
直接知り合いではありませんけど、ネットのテレビ電話で話したことや写真を見せたことがあるので、速水君は香矢さんを知っています。
「ええ。……あの…私なにか…間違えてる?」
皆さん私を珍獣でも見るかの様な顔で見ているんですけど。とっても居心地悪いんですけど!
「…陽向ちゃんがテレビをあまり見ないことを忘れてた…」
「こうやさんって誰…」
未だに私の前から動かない一年生男子生徒が呟きました。
「えーと。私の伯父の祖父です」
「祖父!?」
「もうすぐ七十五だったかと」
「七十五!?」
「七十五で腹筋割れてるの!?」
あれ? ということはそれが普通ではない…ということでしょうか?
あれれ…。
えーと。
「あの、別にムキムキってわけじゃないんですよ? こう…さらりと割れているというか…」
「うん…それ全員じゃないからね、陽向ちゃん」
「そもそもの基準が違うよ」
な、な、なんということでしょう。
普通じゃないと?
「ふ、腹筋はともかくだ。いい男の体を見て何とも思わないのかよ」
「いい…男?」
「……おい。ちょっとまて、俺イケメンだろ?」
「…はぁ」
「はぁって何だよ。これでも時々告白されて……」
「えーと、かっこいいですね」
「棒読みしてんじゃねーよ…嘘だろ…」
何故かしゃがみ込んでますけど。
「陽向ちゃん、さすがに四人とも服着せないといけないから」
「あ、そうですね。服を着る前にきちんとシャワー浴びてくださいね」
暑いとはいえ風邪を引きますよ。
「後は僕らにまかせてね」
「うん、お願いね」
私がそこを離れようとしましたら、しゃがみ込んでいた生徒が顔を上げました。
「そもそも何で風紀委員の、けー番知ってるんだよ。あんた何者?」
「彼女は、生徒会副会長だよ」
「……はあ?」
速水君の言葉にその生徒が立ち上がりました。
「副会長!?」
「生徒会特別制服着てるだろう」
水着を着ている一年生四人が「げっ」と声をそろえて言いました。
げって失礼ですね。
「陽向ちゃん、行って良いよ」
「ええ、それじゃ」
「後で委員長から連絡してもらうから」
「わかった。また明日ね」
「うん、また明日」
風紀委員の女子と「ごきげんよう」と挨拶をしてその場を離れました。
途中でタオルを持った風紀委員とすれ違いましたので、彼らにかけるためのものでしょう。
その日のうちに風紀委員長からメールが届きまして、彼らには明日プールの清掃をしてもらうとのことでした。監視付きだそうですが。
監視役は誰ですか? とお聞きしたところ蓮見先生であると返事がきました。
それはそれは、色々遊ばれそうですね。
四人とも頑張ってください。
へこむ一年生
本気で腹筋を鍛えることを考える速水君(笑)




