第四十五話 そこは水浴びの場所ではありません
(泉都門学園の庭園噴水において)
やりました! 八位です、テストの順位八位になりました。これで夏休みを安心して迎えられるというものです。
テストが終わって夏休みも近いので、何というかそわそわした空気が漂っていますね。
スプリンクラーが水を撒いている音が聞こえます。
今日の仕事は早く終わったので帰寮する前に庭園に寄って行くことにしました。公園みたいな場所があるのですよ。さすがに遊具はありませんけど。
真ん中に噴水があって花も植えてありますし、木陰のベンチも所々にあって、たまに時間があるとそこで本を読んだりします。
今日は明るいとはいえ夕方なので本を読みませんが、少し歩いてから帰ろうと思ったのでした。
そして近づくにつれて聞こえる声。
何やら騒いでいます。
それが噴水のところであることがわかって、私はため息をつきました。
どうみても男子生徒四人が噴水で水浴びをしていました。
確かに夕方とはいえ、若干暑いですけれども。
運動部の部室棟にはシャワーがあります。
「おほん」
態とらしく咳払いをすると、生徒達の動きが止まりました。
「あ」
あ…じゃありません。
噴水の近くにあるベンチにかけてある制服を見ると、どうやら一年生の様でした。
「今すぐ噴水から出てください。庭園の使用規定を知らないはずありませんよね?」
一年生の男子生徒四人は、水着で中へ入っていました。このまま服は着れないでしょうから、この後、部室へ行ったはずです。
ということは、この格好のまま庭園どころか構内を歩こうとした…ということですね。
未だ固まっている生徒を目の前に私は携帯を取り出して風紀委員長に電話をかけました。
「あ、やべえ」
「ちょっ、待ってでるから!」
四人が慌てて噴水から出ようとしていますが、そのまま電話をかけました。
一番速く噴水から出てきた生徒が私に走り寄ってきましたが、ひょいと避けてツーコールで繋がった相手に「噴水前」とだけ言って切りました。
四人が慌てて服や鞄を持って逃げようとしていますけど、その格好なら途中で捕まることでしょう。
去年はこんなこと無かったんですけどね。
やや呆れていると、一人の生徒が私の前に立ちはだかりました。
「おい、逃げようよ」
「風紀委員に連絡されたなら、どっちみち捕まるよ」
潔いですね。良いことです。
「けど、このまま大人しく捕まるのは癪に障る。あんた、こんなことで風紀委員に連絡するなんてバカじゃねぇの?」
こんなこと…と言いましたね?
「裸で歩くことがこんなことですか?」
「裸じゃねえだろ」
「女子には十分裸です」
「そのわりにはジロジロ見てんじゃねぇか」
「見られたくないなら、服を着ていればいいことでしょう」
「あんたが言わなきゃわからなかっただろ」
「言わなかったら、またやったでしょう?」
「やらなかったかもしれないじゃないか」
「さっきまでやっていた人がいいますか」
「冷たい水に浸かりたかっただけだよ」
「部室棟にシャワーがありますよ、水だってきちんと出ます」
「遊んでただけじゃないか」
「何故禁止されているのか、わかっていないんですか?」
「わからないね」
「そうですか、残念です」
「そこまで言って説明しないのかよ」
「今から来る風紀委員の方が、私より詳しく教えてくれますよ」
「口の減らない女だな」
他の三人は彼をほっておいて逃げればいいのに、そのままそこにいると言うことは、彼がリーダーなのでしょう。
「陽向ちゃん」
後ろから声がしましたが振り返らずに答えます。今、振り返ったら目の前の生徒に何をされるかわかりませんから。
「速水君?」
「うん」
ほっとして数歩下がると速水君が肩に手を乗せてきました。
「大丈夫?」
「うん」
他の風紀委員も集まって来ましたが、泉都門の特色上、女子が多いので皆さん目のやり場に困っています。
「ああいうのが普通じゃね?」
目の前の男子がいまだ水着のみでそう言いました。
「何とも答えられませんけど、堂々と脱いでいる方に言われましても」
「もっとこう…恥じらいとかないわけ?」
「どこをどう恥じらえと?」
「これでも結構いい体してると思うんだけどね。腹筋とか割れてるだろ」
ふふんと鼻で笑った生徒は、ニヤリと笑って私の顔をのぞき込みました。
「それがどうかしましたか」
それぞれの公園で色々な噴水があるので一概に言えませんが
泉都門の噴水は入ることが禁止されています




