第四十二話 日差しが暑い季節です
日傘をさす人が増えると夏が来たなぁと実感します。もちろん春にもさしている人はいるのですが、夏になると格段に増えるのです。
それに形も色々、カラーも様々なので面白い風景になっています。日傘というと白か黒だと思っていたのですが、どうやら違うようですね。
日焼け止めの話しが教室で飛び交う季節です。
私は、特にどこのメーカーというこだわりがなかったのですが、真由ちゃんがくれた日焼け止めがサラリとしていて気に入っています。思ったより値段も高くありませんでした。
今年は納涼祭の準備もないので、少し余裕があります。理事長の差し入れがお手製アイスなのに驚きつつも、休憩をきちんと取れるので帰寮時に疲労感が凄いことになる様なことはあまりありません。
今日の仕事はいつもより捗ったため、早く帰れることになりました。それならと、女子三人でカフェに寄って帰ることにしました。
日除けの大きなパラソルの下で冷たい飲み物を飲むのは至福の時です。
三人で楽しく話しをしていると、速水君がやってきて同席して良いかと聞かれました。
風紀委員の仕事が終わったばかりのようで、糖分が欲しいというのでワッフルを勧めました。
目地の半分に特製ジャム、半分にメープルシロップがかけられていて、その横に生クリームです。
「甘過ぎ…」
といいながらも全部平らげていました。
ちなみにチョコレートバージョンもありますよ。
人心地ついたのか、コーヒーを飲んだ後そういえばと話し始めました。
「皆、夏休みの予定って入ってる?」
「夏休み? 私は他校との交流が入ってるけど」
「ぼくはスイスに行く予定」
「オーストラリア」
三人が答えると速水君が小さく唸りました。
「埋まっちゃってるなら仕方ないか…」
「何かあるの?」
「友人のお祖母さんがやってる民宿に団体で来るなら安くするって言われてて、声かけてるんだけど皆埋まってるんだよね」
「団体って何人以上?」
「十五名以上で来てくれないかって」
「それで今のところの人数は?」
「三人」
それは少なすぎですね。
「他の人にも声かけてみるよ」
「日にちって決まっているの?」
「実はさ、大型の予約がキャンセルされちゃったみたいで。それが…ここからここの間」
携帯のカレンダーを見せて、日付を教えてくれました。
「あぁ、その日なら私行ける」
「えっ、本当?」
「交流は夏休みが入ってすぐだし、大丈夫だと思う」
真琴と真由ちゃんはだめなようでした。
残念。
「奈津子さんにも声かけてみようか」
あちこち友達に声をかけてみましたら、意外に十五名を超えました。数えてみたら二十二名。
「二十名超えたけど大丈夫?」
「大丈夫だと思う」
そこへさっき電話をかけた奈津子さんが笑顔でやってきました。椅子を移動させて五人で座ります。
「さすがに生徒だけだと難色を示されたので、うちから引率の大人を連れていくわね」
奈津子さんの言葉に速水君が驚いています。
「湯江の親御さんが来るの?」
「いいえ、執事が来ます」
私と速水君が絶句。
真由ちゃんと真琴が私たちをみて不思議そうな顔をしていました。
三人には当たり前なんですか?
「ぼくのところには執事はいないけど、似たようなことをしている人はいるかな」
真由ちゃんも頷いています。
そ、そうですか。本当に執事っているんですね。
「執事とはいっても半分は見習いみたいなものですし、私たちに年が近いから大丈夫よ」
奈津子さんはその執事さんの写真を見せてくれました。
「あ、本当に若いんですね。執事っていうと初老の人を想像していました」
「陽向さんがひっかかるところはそこなのね。良かったわねぇ速水君」
何かおかしなことを言いましたでしょうか? 不思議に思って速水君を見ると、苦笑していましたよ。
「この程度だと陽向さんには普通ってことなのね。これは面白い」
奈津子さんが何度も頷いて、真琴が笑っています。
参加する名前を見ていると男子の少なさに少し笑ってしまいました。小山内君も参加するようです。
「どうしても女子が多めね。この早良くんって風紀委員の?」
「その早良のお祖母さんのところだよ」
「なるほど」
風光明媚なところらしいです、楽しみですね。




