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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第四十一話 放課後の空です



 雨が降ったり晴れたりと忙しい天気の一日でした。


 構内にあるお店で傘が大量に売れたようです。

 下校時間になっても降っていたので、まだ売れるんじゃないでしょうか。

 

 生徒会室でいつもどおりのお仕事なのですが、始めてすぐのころに速水君が息急き切らせてやってきました。

 何事かと思いましたら窓の外を指したので、その時いた全員で外を見ますと虹です。虹がでていました。


「わぁ」


 仕事をしていたら、まず見られなかったでしょう。

「ありがとう、速水君」

「えーと、タオルの…お礼」

 

「わー、よく見て二重の虹だ!」

 芹会長が窓に貼り付いて叫びます。

 虹だけじゃなく、雨のせいであちこちがキラキラと輝いていました。

 そして虹が消えるしばしの間。

 全員で眺めていました。

 時間が止まったかのような…そんなひとときでした。


「あー…消えちゃった。でも、良いもの見たね!」

 芹会長はクルリとこちらに向き直って笑うと速水君を見てお礼を言いました。

「ありがとうね、速水君」

「いえ」

「ところでタオルのお礼って何?」

 速水君の笑顔がピシリと音がしそうな感じで固まりました。

「あ、それはですね」

 私が説明しようとしましたら、速水君がハッとしたようにワタワタと手を動かします。

「し、仕事、そう、仕事の途中なので失礼します!」

 脱兎のごとく生徒会室から出て行きました。

「ちっ、逃げたか」

 芹会長の舌打ちに康君が目を丸くしていますよ。

「綺麗だったね」

 真由ちゃんの一言で全員が黙って頷きました。

「久しぶりに見たかも」

 真琴も微笑んで携帯で撮った写真を見せてくれました。

 確かに久しぶりかもしれません。

 後でもう一度お礼を言っておきましょう。

「さ、仕事に戻ろうか」

「はい」

 それぞれ机に戻って仕事を始めましたけど、何だかとっても温かな気分でした。


 次の日に速水君がお菓子と一緒にタオルを返してくれました。

「母に洗濯してもらったから」

 お菓子はピンクのマシュマロでしたよ。

 速水君のお母さんが選んだお菓子だそうで、ハート型なんかも入っていて可愛いです。

「お礼なら虹を見せてくれたことで良かったのに」

「おかげで風邪もひかなかったし」

 透明な袋にタオルとお菓子が入っていてピンクのリボンで口が結ばれていました。

 可愛らしいお母様なんですね。

「ありがとうございます」

 そういえば新聞部のホームページに虹の写真が載せられていました。さすが新聞部、とても綺麗に撮れています。

 後でどこから撮ったのか聞いてみると屋上からとの答えが返ってきました。

 屋上って今、立ち入り禁止のはずでは?


 屋上のドアは内も外も鍵が必要なのでどうやって出たのかと尋ねようとしましたら逃げられました。


 新聞部にどこで撮ったのかを表記しないのと、教えないことを約束してもらいました。

 屋上の手すりを修理中なので、危険であることを芹会長にお願いして叱ってもらいます。

 後ろから見ていても怖いですから。しっかり反省してほしいです。

 その後、後藤田先生にお話して、業者さんに鍵を取り換えてもらました。

 新聞部の部長が口を尖らせていたので、鍵…持ってましたね? と聞いたらそっぽを向いていました。


 鍵の保管を以前よりもっと厳重にしてもらわないといけないようです。



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