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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第三十七話 植物園です



 寮の前で待ち合わせをしていたのですが、てっきり芹先輩も来ると思っていたので驚きました。

 修斗先輩一人しか立っていません。


 驚いていることを不思議に思ったのか、立ち止まっている私のところまで来て、おはようと声をかけてくれました。

「あ…おはようございます」

 どうしましょう、お弁当三人分持って来ちゃいました。

 私の荷物を持ってくれましてトランクへ。その後、車に乗り込みました。車です…植物園まで送ってくれるどころか帰りも送ってくれるのです。

 あ、そうだ。運転手さんにもお弁当を食べてもらえば良いですね。

 少しほっとしてシートベルトを締めました。

 横を見ると私服の修斗先輩です。

 目があったのでニヘラと笑ってみせると、膝掛けを渡してくれました。

「眠いなら植物園に着くまで眠っていれば良い。着いたら起こす」

 いえ、眠いわけではないのですが。

 じっと修斗先輩を見ると、一瞬目が泳いで戻ってきたと思ったらポケットから飴を取り出して渡してくれました。

「姉が美味しいと言っていた飴だ。間違いないと思う」

「ありがとうございます」

 修斗先輩ってお姉さんいるんですね。

 さっそく食べてみると桃の飴でした。確かに美味しいです。パッケージも可愛いので捨てるのがもったいないです。


 車が動き出して久しぶりの遠出であることに、何だかウキウキしてきました。

 ゴールデンウィークに行ってきたテーマパークは、意外と近場にあるところなので、今日の植物園ほどの移動距離はありませんでしたし。駅からでているテーマパーク行きのバスに乗ったので車とは少し違いました。

「晴れて…良かったな」

「はい、そうですね」

 雲一つない天気です。少し暑くなりそうですね。

 日焼け止めは塗ってきましたが、水分補給に気をつけないといけないかもしれません。

 植物園に飲み物くらい売っていると思って、持ってこなかったのですけど…大丈夫ですよね?


 途中で一度休憩を挟んで、ようやく植物園に着きました。


 入り口でチケットを買っている時に、職員のお姉さんに「今日はラッキーですよ」と言われました。

 パンフレットの園内地図のところにわざわざ丸を付けてくれて、数十年に一度しか咲かない花が今日咲いているのを見れるのだとか。

 思わずニッコリするとお姉さんもニッコリ笑ってくれます。修斗先輩を見上げると、ほのかに微笑んでいました。

 見頃のバラも綺麗で、いろんな種類がありました。咲かせるのに結構な手間がかかるそうですね。

 アーチになっているところを通って奥へ進みます。

 食虫植物なんかもあって説明してくれる職員さんに質問をしたりして…いよいよ例の花が見れる場所へと行きました。

 天井が高い温室みたいなところなのですが、その植物も背が高く下から見上げても花が遠くて…見えなくもないのですが、はっきりと見えるわけでもありません。

 何か咲いているな…程度です。

 そこは植物園の職員さんも考えているらしく、足場が組まれていました。

 そこを上ると花が見える高さまで行けます。

 少し揺れるので怖かったのですが、きちんと花がみれましたよ。サボテンの一種だそうです。

「陽向」

 修斗先輩が手を差し出してくれたので、それに縋って足場を降りました。


 揺れるのが怖かったですね。実は吊り橋も苦手です。地面に足がついてホッとしました。



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