第三十四話 日曜日のことです
寮生活とはいえ、届け出れば外出は自由です。
ですが今日はどうしても起きられなくて、お昼も近いというのにまだベッドにいました。
携帯が何度も振動する音がしましたが、そのままにしていました。
なので次に目を覚ました時には、寮監の荒田さんが傍にいてびっくりしました。
「あ、荒田さん」
「あぁ…良かった。何度もノックしたり電話をかけたのだけど、返事もないから心配したわ」
額に手を当てられて、ホッとしたような顔をした荒田さんを見た後、時計をみて驚きました。
午後4時でした。
「体調はどう? 具合が悪い?」
「あ、いえ。眠かっただけです」
「……そう? とにかく何か食べないと」
「はい」
食堂に行くつもりだったのですが、荒田さんが運んでもらうように手配してしまいました。
「少し顔色がよくないわ」
「寝すぎました」
「次に病院に行くのはいつ?」
「ええと、火曜日です」
「そう」
運ばれてきた食事が終わるまで隣に座っていた荒田さんは、私に携帯電話の番号を教えてくれました。
寮監の部屋の電話番号は知っているのですが、携帯の番号は知りませんでした。これプライベート用じゃないんですか?
「真夜中でも朝方でも良いから、何かあったら連絡頂戴ね」
「は、はい」
「お友達も心配していたわよ、落ち着いたら連絡してあげて」
「あ…はい。すみませんでした」
「夜食を用意しておくわね」
「い、いえそこまでは」
「こんな時間に食べたんだから、絶対お腹すくわよ」
「うっ…」
温かいお茶を淹れてくれまして、それを飲むとホッとしました。
「まだ眠気はある?」
「いえ、今はありません」
「そう。最近眠れないとかそういうことある?」
「いえ、無いです」
「それなら良いけど」
嘘ではなく本当にそういうことはないんですけどね。
「明日登校前に私の部屋に寄ってくれる?」
「あ、はい。わかりました」
「それじゃ、また後で来るわね」
「ご心配をおかけしました」
立ち上がって頭を下げようとしましたら、止められました。
「勢いよく立ち上がると眩暈を起こす場合があるから、座っていた方がいいわよ」
食器を乗せたカートごと荒田さんが出ていくと、私は携帯を確認しようと手に取ったところで電話がかかって来たので驚いて落としてしまうところでした。
「も、もしもし?」
慌てて出たので、誰なのかを確認し忘れました。
〔陽向か?〕
「し、静先輩!?」
〔俺のところまで連絡がきたぞ、何があった?〕
「いえ、何もないです」
電話の向こうでため息が聞こえました。
〔何もないとか言ってるぞ〕
これはたぶん私への言葉じゃないですよね。
「静先輩?」
〔貴雅と一緒に晃の家にいるところだ〕
「えっ? 理事長のお宅ですか?」
〔違う違う、賃貸の方だ〕
あぁ、そういえば大学に入る少し前に大学部生専用のマンションに引っ越しされたんでしたね。
〔誰でもいいから陽向と連絡を取ってほしかったみたいでな…ともかく繋がって良かった〕
「すみません、先ほど寮監の荒田さんが来ましたので」
〔そうか…〕
「本当にすみません、お二人にも謝っていたとお伝えください」
〔芹たちにも連絡しておけよ〕
「はい、わかりました」
一度目を覚ました時に起きておけば良かったですね。
起きられなかったのですけれども。無理して起きれば起きられなかったこともないような…。
〔陽向〕
「は、はい」
〔……いや、まぁ。その、何だ。無理するなよ〕
「…はい、ありがとうございます」
近いうちに…と言って電話が切れました。
さてこれから皆さんに連絡をしないといけませんが…怒られますよね…。
ううう。
少しだけ躊躇して…諦めて電話を掛けました。
陽向は少しストレスが溜まっていたもようです




