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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第三十二話 情報流出?



 新入生歓迎会は滞りなく行われました。

 梅干しは涙を呑んで食べませんでしたよ。新歓は一年生が主役ですからね。

 私が涙を呑んで…という話をどこから聞いたのか、静先輩と貴雅先輩が連名でその梅干しを贈ってくれました。

 本当にありがとうございます!

「泣かなくても…」

 芹先輩が笑っていますが、やはり諦めのつかなかった梅干しです。嬉しすぎて壺を抱きしめたいくらいでした。

 生徒会全員が一粒ずつ食べて、残りを私にくれました。

「い、良いんですか?」

「ゴールデンウィークに自宅に帰るんでしょう? ぜひご家族と食べて」

「ありがとうございます!!」

 芹先輩の言うとおり、今週末久しぶりに家に帰ります。

 心配して電話やメールを頻繁にくれましたが、ここ数日忙しくて短いメールしか送っていません。

 少しだけホームシックになったのは内緒にしておくつもりです。

 病院で待ち合わせて父に会えたのが二回ほどなので、華さんと龍矢さんにはまったく会えていないんですよ。

 お土産を持って帰れることはとても嬉しくて顔がニマニマしました。


「あの…会長。少し宜しいですか」

 山影君が困った顔で言ったので、芹会長が頷いてそちらへと行きました。

 何かあったのでしょうか。

「ん? なにこれ」

 眉を寄せて私を手招きするので画面を覗くと、問い合わせのメールが殺到していました。

「新歓の費用について…?」

 費用?

 そんな問い合わせは初めてで、全員が顔を見合わせました。

 あの日参加していたお店からではなく生徒たちからの問い合わせなのです。

「この金額…正確ではないけど近いよね」

「そうですね…」

 会計の真琴が頷いてタブレットを見せてくれました。

 四捨五入されてはいましたが、完全に関係者からの流出だと思われる金額でした。

「どうします?」

「トップページにこれについて載せるしかないよね。これだけの問い合わせが来てるんだし」

 一つ一つに返信は大変です。

「金額は教えることはできないから、後は落ち着くのを待つしかないかな」

 毎年同じような金額らしいのですが、知らない生徒は驚きますよね。

 普通の生徒会が一年間で使う金額以上を使っています。

「それで…誰がこの情報を流したか…ってことになるんだけど」

 金額を知っているのは、ここにいる生徒会全員です。

「葛城さんには見せてないから、除外しても良いと思うけど。出入りしている人には一応話を聞かないといけないよね。速水君もたまに来るし呼んでもらえる?」

 仕事の最中に入って来たことはないはずですが、一応速水君も呼び出しました。

 風紀委員でもこの話は聞こえてきていたそうで、情報収集をいくらかしてくれていました。

「外部生からの反発というか、使いすぎじゃないかという声が多いよ」

 あぁ、私もあの金額は使いすぎじゃないかと思っていました。

 でも一年間で泉都門高等部生徒会が使う金額のトータルを見たら何も言えなくなりますよ。

 どっからきてるの、このお金!? って叫んだくらいです。

 運営資金には、OBからの寄付が入っているのですけどね。

「この情報の正否は答えられないと載せるからね」

 速水君の後に葛城さんが入ってきました。

「遅くなりました」

 全員が葛城さんを見たので、葛城さんは少し引いていましたね。

「何か?」

「うん。新歓に使われた費用の話」

「あぁ。あれはびっくりしました。友達に話したら、おかしくない? って言われましたよ」

 ん?

 んん?

「噂を…どこから聞いたの?」

「いえ、蝶ヶ原君が使っていたタブレットを見ました」

「はい?」

「お茶を淹れた後、後ろを通ったら見えたので」

 その金額に驚いて友達に話した…と。


 全員脱力しました。



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