第〇三十話 つっかかる理由(わけ)
それから毎日色々と聞いてくる葛城さんですが、時々躊躇いを見せるんですよ。聞くことが怖い…? という感じですね。
私への突っかかりは相変わらずですけど。
いつものように生徒会室で仕事をしていると、ノッカーの音が聞こえて修斗先輩が確認してから開けました。
「よぉ。元気そうだな」
その声に私の心臓がドキンと跳ねて体が固まりました。
「あ、きら先輩」
私服姿の晃先輩でした。もう高校生じゃないのですから当たり前なんですけど。もの凄く昔にあったような気がして泣きそうになりました。
「会いに来るって言ったろう?」
「はい…お久しぶりです」
何とか言葉を出しました。
「静も誘ったんだがな。家の方で忙しいらしい、また今度って言われた」
そういってお土産を康君に渡しています。
「芹、だいぶ会長も板についてきたんじゃないか?」
「ふふふ、そうですか? うれしいな」
純君の淹れたお茶を飲みながら晃先輩は生徒会室を見渡しました。
「ちょっと前まで頻繁に来てたのに、改めてくると懐かしいな」
「一ヶ月ちょっとしか立ってないですよ、晃先輩」
真琴が笑いながらクッキーを出します。
その時、職員室に行っていた葛城さんが帰ってきて晃先輩をみるなり、飛びつきました。
「お兄ちゃん!」
「うおっと…おまえ高校生にもなって落ち着きがたりないぞ。離れろ」
「久しぶりなんだから良いじゃない! どうして遊びに来てくれないの?」
「風紀委員が忙しかったんだよ」
「もうやってないじゃない」
はぁぁぁと深いため息を吐いて晃先輩はくっつこうとする葛城さんを離そうとやっきになっています。
そういえば葛城さんは晃先輩の従姉妹になるんですよね。それでお兄ちゃんですか。
「あぁ~なるほどね」
芹先輩が私の隣で呟いたので意味が分からずに横を見ると、芹先輩が納得した様子で頷いていました。
「なるほど」
真琴と真由ちゃんも顔を見合わせて頷いています。
私と康君がポカンとする中、純君が私たち二人を見て笑い出しました。
「え、何?」
「…っくくっ、何でもないです」
「何でも無い笑いじゃないでしょ!」
「康之介と陽向先輩ならそうだろうなって思っただけです」
「何が?」
うくくくっと笑って下がっていく純君。
せ、説明してください。
みんな何に納得しているんですか?
「康君」
「はい」
「わかる?」
「さっぱり」
そうですよね。私もさっぱりです。
「仕事中に騒がせたな」
「いえ、丁度休憩しようと思っていたところです」
芹会長が笑って首を横に振りました。
「そうか、土産のお菓子は早めに食ってくれ。近いうちにまた来る」
「ありがとうございます」
「それじゃな」
「えー! お兄ちゃん帰っちゃうの!?」
「良いから、離れろ」
「お見送りする」
「仕事しろ」
従姉妹っていうのも良いですね。何て思っていたらデコピンされていました。
「いたっ、ひどいお兄ちゃん」
「し・ご・と・しろ!」
「はーい」
ふくれっ面になりながら額を押さえて、葛城さんが晃先輩の服から手を離しました。どうせ休憩に入るのですから別にお見送りしても大丈夫だと思うのですけど。
修斗先輩が開けたドアから軽く手を振って晃先輩が出て行きました。
それで結局、皆は何に納得していたんですか?
誰か教えてください。




