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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第二十八話 生徒会の仕事



「何ってお茶を飲んでるけど?」

「けど? じゃないよ…何で一人で飲んでるの!?」

 葛城さんは訝しげに純君を見ています。

「先輩たちにもきちんと聞いた?」

「何を?」

「何をって…お茶を飲むかどうかだよ!」

「私、お茶くみのために生徒会に入ったわけじゃないわ」

 泉都門生徒会はそれぞれ一応役職がありますが、その仕事がない時は役職関係なく仕事をします。

 一番忙しいのは芹先輩ですが、次に忙しいのは補佐の康君ですね。

 葛城さんは(仮)なので補佐の補佐です。

「純君」

「…はい」

「葛城さんと会議室に行ってきて。カーテンが一部破けているっていう報告があるんだ」

「…わかりました」

 葛城さんも渋々立ち上がりました。

「ただいま戻りました」 

 康君が遅れて戻ってきましたね。

「丁度良かった、蝶ヶ原君。カップの片づけお願いね」

「はぁ!?」

 帰って来たばかりの康君ではなく純君が葛城さんの言葉に声を荒げました。

「何でちょ…康之介が片付けなきゃいけないんだよ、使ったの葛城だろ!?」

「何でって、蝶ヶ原君が補佐だからよ」

「おまえの補佐じゃねぇよ!」

 さっと影が動いたかと思ったら、修斗先輩が純君の手を抑えていました。

「しゅ、修斗先輩っ」

「純、落ち着け」

「だってっ…」

「康君、戻ってきてすぐのところ悪いけど、葛城さんと会議室にカーテンの破損部分を確認してきてもらえるかな」

「あ、はい。わかりました」

 二人が出て行った後、純君にソファに座ってもらいました。

 落ち着くにはやはりお茶でしょう。

「あ、自分で淹れます」

「良いから、座ってて」

 純君はお茶を飲むと少しホッとしたようで力を抜いていました。

「すみません…カッとなりました…」

 お茶を飲み終わって立ち上がると頭を下げました。

「色々と言いたいことがあったんですけど、あいつが生徒会に入ろうと思った動機を知ってからすごく腹がたって…」

 皆さんとても頑張っているのに…そう呟いて純君は再び座って頭を抱えました。

「もしかして、特別制服のこと?」

 芹先輩が言ったので純君が勢いよく顔を上げました。

「知ってたんですか?」

「うん…」

 芹先輩が苦笑して頷きます。そういえば最初から何かを知っているようでしたもんね。

「周りにね言ってたみたいでね。ボクの耳にも届いたんだ。生徒会特別制服を…それも陽向ちゃんが着てるバラ付の特別制服を着たいから入るんだって」

 私は思わず自分の着ている特別制服の腰にあるバラの刺繍を見ました。

「これ…ですか」

「そう、それ。それが欲しいんだって」

「……はぁ」

 欲しいと言われましても、彼女は一年生なので仮に副会長になってもバラは青ですよ。

「仕事がきちんとできるなら、理由はどうでもいいかなとも思ったんだけど。戻ってきたら、話をしようか」

「そうですね。その方が良いと思います」

 決してキラキラしているばかりではないことを。

 一目置かれている生徒会。それはやはりそれなりに理由があるのだということを。

 学食で個室をもらっているのに文句を言われない理由。

 

 お茶を飲みながら笑っているだけではないのです。


 戻ってきた葛城さんに、まずこの赤いバラの制服は二年生じゃないと着れないことを教えた後、新学期が始まってからの私たちの仕事を教えました。

 あんぐり口を開けて聞いていた葛城さんは生徒会に入ったら成績が二十五位以内じゃないとだめだと教えると、急に立ち上がりました。

「なっ、なんでそんなことまで…」

「生徒会は授業を休むこともあるんだ、もちろんその間仕事があるんだけど。それで成績が下がるようなら生徒会にいられないんだよ」

「お互いがお互いを補佐してなりたっているんだよ。誰がお茶を淹れて片付けるかは、その時手が空いている人なんだ。あの時、手が空いていたのは葛城さんだった。そうでしょう?」


 真琴が芹先輩に続いて言うと、葛城さんは口をギュッと閉じて何も言いませんでした。 

 

「生徒会に入りたかった理由は別に良いけど。入りたいなら、きちんと仕事をしてもらわないと困るんだ。どうする?」

「お茶汲みが仕事ですか」

「言っておくけど、お茶だけじゃなくて簡単な掃除も仕事だよ。でもこれは君だけじゃない。さっきも言ったけど手が空いた人がやる仕事だ。修斗やボクだって一・二年生の時に掃除をしたよ? お茶だって淹れた」


 会長職はちょっと忙しすぎて、他ができないんだけどね…と呟いて芹先輩はにっこりと笑いました。




動機が動機なので様子をみていた芹先輩でした

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