第二十六話 お茶は誰が?
途中でよろよろと歩く康君に会いまして荷物を半分持ちました。
「す、すみません陽向先輩」
「何でこんなに荷物が増えてるの?」
クラブサンドが入った袋なら、両手で持つだけですむはずなんです。なのにさっきまで康君が持っていたのはクラブサンドが入った袋二つ…八人分、ケーキが入った箱一つ…八個入り、クッキー缶二つ、ポップコーンの入った袋…手作りらしいのが二つ。
ポップコーンが入った袋がかさばってますね。これを今は半分にして持っています。
「途中で同じクラスの生徒に会いまして…」
クラブサンドを買ったら、カフェの店員さんから新作の試食ケーキを帰りに渡され、さらに同じクラスの料理部の生徒に会って作りすぎたからとポップコーンの袋を二つくれたのだそうです。
「その後、僕が生徒会にいるって知ってる先生がもらいものだけどって言ってクッキーを差し入れしてくれました」
そういえば少し前に食べた試作品の感想を言ったら、近いうちに違う試作品をって言ってましたね。
「それなら誰かにお願いするか、私たちに連絡してくれれば良かったのに」
「はぁ、でも持っていけなくもないかと思いまして」
随分とよろよろしてましたよ?
「ポップコーンはこっちが塩味、そっちはキャラメル味だそうです」
「美味しそう」
生徒会に入っていなかったら料理部に入っていたかもしれませんね。
今度覗いてみましょう。
「そういえば、康君」
「はい?」
「身長…伸びたね」
「はい!」
並んで歩くとよくわかります。
中等部の頃は私より低いくらいだったのに、追い越されました。
「成長早くない?」
「自分で成長度合いを進めているわけじゃないです…」
「この調子でぜひ純君を追い越して!」
「えええ? ぎゅ、牛乳飲めばいいですか…?」
「冗談よ」
「……はい」
二人で生徒会室までゆっくり歩いて…そうしないと落としそうだったので…ノッカーに手が届かなかったので、たまたま通り過ぎようとしていた生徒にお願いしてノッカーを叩いてもらいました。
お礼を言っている間にドアが開きます。
修斗先輩が私たち二人を見て、目を丸くしていましたよ。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
修斗先輩が荷物を一部持ってくれて、中へ入るとテーブルに置きました。
「何だか大荷物だね」
康君がもらった経緯を話している間、ケーキを冷蔵庫に入れてクッキー缶を乾き物のお菓子が入っている場所へとしまいました。ケーキはクラブサンドが食べ終わったら出しましょう。
問題はポップコーンですね。
どこに入れたらいいでしょう。クッキーと同じところに入れようとすれば入らなくもないですけど。
「何、悩んでるの? 陽向ちゃん」
「いえ、ポップコーンをどこに入れようかと…」
「あぁ、どうせだから片方を食べようか。八人いるし食べれるでしょう」
「そうですね」
まだ純君と葛城さんは戻ってきていないようですね。
「そろそろ戻ってくると思うから、皆で休憩がてら食べようか」
「はい」
康君と一緒にお茶を淹れる準備をしていたら、二人が帰ってきました。
何やら喧嘩をしています。
「だから、それは自分で勝手にそうしたんだから君が出すものだろ」
「生徒会の仕事中なんだから、生徒会から出すべきじゃないの!?」
「バスに乗らなくても行ける距離だったじゃないか」
「丁度バスが来たんだから乗るべきでしょう、時間短縮よ!」
「君がバスで到着した時間とそんなに変わらなかったぞ!」
「それは山影君が足が速いからでしょう!」
「俺は走ってない、葛城が歩きたくなかっただけだろ。だから自分で出せ」
生徒会に入って来てから睨み合ってます。
二人の会話から何となく推測できますが、ここはきちんと聞かないといけませんね。
その前に、まずはお茶を淹れましょうか。
「あ、陽向先輩。お茶なら俺が淹れますから」
私がお湯を沸かし始めたところで純君が言いました。
「いえ、康君と準備をしていたので大丈夫ですよ」
そもそも後輩がお茶を淹れるなんていう決まりはありません。どちらかというと少し手の空いた誰かが淹れることが多いですね。何しろそれだけ生徒会は忙しい。仕事と時間によっては私たち二年生の方が時間が空くことがあるのです。
芹先輩がお茶を淹れることが少ないのは、それだけ忙しいからということになります。お疲れ様です。




