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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第二十五話 忙しいとお腹が空きます


「あ、すみません。僕が…」

 康君がしょぼんとしてしまいましたけど、別に悪くないですよね。なのでにっこりと笑って見せました。

「ところで芹会長。今年の納涼祭はどちらの高校になるんですか?」

「あーっとね。どこだったかな…」

「ちょっと!」

 葛城さんが何かを言い掛けましたが、忙しいので後にしてもらいます。

「後藤田先生に確認してきますね」

「あ! ついでに学食に寄って、ここ数週間の様子聞いてきて」

「わかりました」

 軽く頷いて生徒会室を出ようとした時、腕を掴まれたので振り返ると葛城さんが目をつり上げていました。

「無視する気!?」

「すみません、急いでいるので帰ってきたら改めて自己紹介しますね」

 早くしないと学食の早番の責任者が帰ってしまう時間になってしまうのです。

「離してもらえますか」

「名前をいう時間くらいあるでしょう!?」

 私は腕時計を見て小さくため息をつきました。

「先ほど蝶ヶ原君が言っていた通り、副会長の水崎陽向です。急いでいるので離してください」

 ようやく離してくれたので、生徒会室を出て階段を駆け下りました。学食に電話をかけることも考えましたが、歩きながら電話をかけるのは校則に違反しますので、早歩きで学食を目指しました。

 学食に入ろうとしましたら、すでに閉められていたので裏口から入って責任者の方を呼んでもらいました。

「丁度帰るところだったんですよ」

 いつもなら八時まで開いているのですが今日は新しく入った人の歓迎会のために四時までとなっていたはずです。

「後かたづけも早く終わりましてね」

 春からの新メニューの人気度や、一年生が入ってからの様子などを聞いていると、奥から着替えてきたらしい人が数名出てきました。

「丁度良かった、新しく入った二人ですよ。こちら生徒会副会長の水崎さんだ」

「「初めまして」」

「あ、初めまして」

「二人にも話しを聞きますか?」

「あ、いえ。歓迎会が待ってるんですよね? また今度お願いします」

 楽しみなのかそわそわしてますよ。

「新入りも含めてゴールデンウィーク明けに新メニューを出す予定です。その前に試食お願いできますか」

「はい、よろこんで」

 いつも美味しいのでとっても楽しみですよ!

 皆さんと一緒に控え室を出て、ドアの前で別れました。

 その後、職員室に行って後藤田先生に確認しようとしましたら、タッチの差で出たとのこと。

 仕方なく職員室を出てすぐのところで、電話をかけてみました。

 …出ませんね。 

 メールでも良いのですが、後藤田先生はメールの確認をなかなかしてくれないので返信が遅いのです。

 もう一度職員室に入って、後藤田先生のデスクトップパソコンの画面に付箋を貼っておきましょう。

 納涼祭についてと書いて、一応隣の先生にもお願いして職員室を出ました。


 生徒会室に戻ってみると一年生三名はおらず、二・三年生だけで仕事をしていました。

「ただいま戻りました」

「おかえり陽向ちゃん」

「「「おかえり」」」

 忙しいときでも、皆さん必ず帰ってきた人を見ながら「おかえり」と言ってくれます。

「一年生の三人はどうしたんですか?」

「純君と葛城さんは構内バスの夏の時間変更についての話しをしに言ってもらったよ。康君は買い出し」

 クラブサンドでも頼んだのでしょうか。

「康君一人で大丈夫ですか」

「八人分…は大変か」

「私、行ってきます」

「帰ってきてすぐにごめんね」

「構いません、他にありますか?」

「ないよ、帰ってきたら一緒に食べよう」

「わかりました」

 念のため康君に電話をかけてみましたが出ませんでした。両手が塞がっている可能性大ですね。

 

 急いでカフェへの道を歩きました。



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