第二十四話 (仮)です
入学式も無事…一応無事に終わりました。
次の行事は新入生歓迎会ですね。
その前に、軽い打ち上げとなりました。
椅子運びの方も含めてですので結構大人数でしたね。
和やかに終わって、さぁ次へと感じでしたのに。
次の日のお昼休みに生徒会室に行くと、芹会長が珍しく頭を抱えていました。
「芹会長、どうかしましたか?」
「あぁ…うん。ちょっとね」
はぁ…とため息をついて疲れた顔を上げました。
「それが…さ」
「はい」
芹会長が話し始める前に、ドアが開いて修斗先輩が入ってきました。手にはカフェの紙袋を持っています。
「芹、買ってきた」
「ありがとう、修斗」
珍しいですね、どんなに忙しくても昼食は学食でしっかり食べる芹会長なのでが。
受け取ったカツサンドを一口食べて、またため息をつきます。
「大丈夫ですか芹会長」
「う…ん」
コーヒーを淹れてテーブルに置くと、潤んだ目で私を見上げました。
「今日の朝、寮の玄関を出たところで一年生に声をかけられてさ」
「はぁ」
「生徒会に入りたいっていうんだ」
「はぁ」
「陽向ちゃんの例もあるから、別におかしくはないんだけど」
ということは外部生なのですね。
生徒会室はそれなりに広いのでもう一つくらい机を置けるでしょう。
「何か問題でも?」
「市長さんの娘さんなんだよね」
「はぁ…それが何か」
そういえば市長さんは理事長のご兄弟でしたっけ? そうなると姪御さんということになるのでしょう。
「いや…うん。僕の勝手な心象だからさ…うん。少しの間、生徒会に仮で入ってもらって様子をみるつもりなんだけど」
「はい」
「えーと…一応陽向ちゃんたち二年生にお願いしようかと」
「はい」
なんだか奥歯に何か挟まった言い方ですねぇ。
「今日の放課後から来てもらうことになっているんだけど、いいかな」
「はい、構いませんけど?」
「うん、お願いね」
憔悴している芹会長を修斗先輩に任せて、私は学食へと向かったのでした。
放課後。
芹会長が言っていた生徒が生徒会室にやってきました。
そして、少し驚きました。
「初めまして、一年三組葛城春奈です」
てっきり和泉だと思っていましたら、理事長の弟さんは婿養子に入ったそうで葛城さんでした。
仮なので机はまだ用意されておらず、ソファのところで仕事をしてもらうことになったのですが、その旨を告げると彼女の右の眉がピクリと動きました。
「机がある備品庫はすぐ近くだと思うのですけど」
「さっき言った通り、君は仮だからね」
「机ひとつくらいすぐじゃないですか」
「自分で持ってくるなら良いけど?」
「私、重いものは持ちません」
うん、すごい。すごいです。
「新入生歓迎会準備の最終調整で忙しいんだ。それが終わってからでいいかな」
「許可をいただければ、運ばせますので。よろしいですか」
運ばせるって誰に…。
ぽかんと顔を見ていると、いきなりキッと睨まれました。
「何か顔についていますか?」
えーと、何で初対面からけんか腰なのでしょうか。見ているのは私だけじゃないと思うのですけど。
「ところで、あなたはどなたですか」
「あ、葛城さん。副会長の水崎先輩だよ」
康君が慌てたように言うと、何故か鼻で笑われました。
「ご自分で自己紹介もできないんですか」
えーと。うーんと。
これ、私。どうしたらいいんでしょう。




