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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第二十二話 確認中です


 続々と新入生と保護者の方がテントに集まって来ています。保護者の方が来るには少々早い時間なのですが、一緒に来るという人が結構いるのですね。

 そのため保護者の控え室は用意されています。

 確認している間にもホールや寮の方からの情報も入ってきますし、中等部大門からの連絡もありました。

 

 今年も間違えた方がいるようです。

 泉都門学園は六角形なので、グルリと歩けば着くには着きます。ですが距離が結構あるので、車で送ってくれるとのことでした。

 迷子の情報は今のところありません。


 交代して休憩を取っていると、テントに蓮見先生が顔を出しました。

「見回りお疲れさまです」

「ん? おお、水崎」

「今のところ特に問題もありませんよ」

「そうか。忙しいところ悪いが能美先生に話しがあるんだが」

「わかりました」

 能美先生を呼びに行って、その間の仕事は私が代わります。

 戻ってきた能美先生は、何か困ったような顔をしていましたよ。

「どうかしましたか?」

「あ、いや。大丈夫。休憩に戻って」

「はい」

 生徒は無事全員教室に入ったとの連絡はありましたが、その後、保護者の方が怒濤のように来るので寮の方にいた真由ちゃんもこちらに来るそうです。

 十時が過ぎても、その後から来る保護者もいるので、今日はしばらくここで待機ですね。

 式に間に合わなくても、その後の保護者パーティに出る方もいるのですが、そちらは少数なので守衛さんにお願いすることになります。

 

 十時近くなった頃、急いで来たらしい保護者の方が私を見て動きを止めました。

「あ、あの」

「はい? 何でしょう」

「失礼、こちらの制服とは違う様なので、どちらのかと……」

「あぁ、私は生徒会に所属しております、これはその生徒会の特別制服です」

 腕章を見せると、その男性はなるほどと頷きました。

「お名前を伺ってもよろしいですか?」

「……水崎ともうします」

「み、水崎さん」

「……あの、確認証を出していただけますか」

「あ、あぁ。はい」

 胸ポケットから出された確認証を受け取ろうとして、ガッと右腕を捕まれたのには驚きました。

「離してください」

 あまり大きな声で言ったつもりはなかったのですが、あたりがシンと静かになりました。

 受け取ろうとした確認証がどこかへ行ってしまっています。

「離してください」

 もう一度言いましたが離してくれる様子もありませんでしたので、右手を(こぶし)にして捻って引くことで拘束を抜けました。最初から拳にしてあると抜けにくいのですが、書類を受け取ろうと手を開いていたので助かりました。

「先生、後をお願いします」

 金田一先生が頷いて代わってくれました。


 どこから連絡が行ったのか芹会長からホールに戻ってくるように言われて、車の迎えがきまして。自転車は後で風紀委員が届けてくれましたけど、大げさすぎませんか。

「陽向ちゃんはあれだけ色々あったのに、危機感が足りない!」

 芹会長に珍しく怒られました。

「ターゲットAには風紀委員を二名付ける。門から出るまで目を離さないようにお願いしますよ、蓮見先生」

 いつの間にか来ていた蓮見先生に芹会長が厳しい声で言って、書類を受け取った蓮見先生がやれやれという風に肩を竦めました。

「すみません、蓮見先生」

「半分はわかってないだろう、水崎。まぁいい。だが、保護者とはなあ。この際、お面でもかぶるか水崎?」

「ボクとしては防毒マスクをかぶせたいくらいですよ」


 それ怖いですって芹会長。



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