第二百十一話 視聴覚室にて
次の日の放課後、さっそく一年五組に行くことにしました。こういうことは早めに対処した方がいいでしょうから。
階段を上っているとあちこちから「ごきげんよう」と声がかかります。それに答えつつ一年生のフロアに着くと「あーっ!」という大きな声が聞こえました。
「水崎副会長様!」
一気に視線が集中してしまったじゃないですか、葛城君!
「えーと、お話があるのですが。今、大丈夫ですか?」
「は、はいっ」
何だ何だと一年生が廊下に出てきたせいで、結構な野次馬が集まってきてしまいました。
「あれ、陽向先輩?」
純君がその間から出てきたので、少しホッとしました。純君は本当に頼りになる後輩です。
「良かった。どこか開いている教室ないかしら?」
「んー。そうですね、それじゃ視聴覚室行きましょうか」
「ええ」
葛城君の方を振り返ると何故か純君を睨んでいます。
純君はそれが見えているでしょうに何も言わずに、康君を呼んで二人で野次馬をよけてくれました。
結局四人で視聴覚室へと行くことになったのですが。
視聴覚室に入ってドアを閉めた途端でした。
「何で、お前がお姉さまの事を名前で呼んでるんだよ!」
そう叫んで葛城君が純君に飛びかかったのです。
ひょいと避けて、純君は私の後ろへと逃れました。
「えーとね、葛城君。生徒会では皆それぞれの下の名前で呼び合ってるの」
と言ってみたところで葛城君の表情は変わりませんでした。
「陽向先輩、手紙の答えを言っちゃってください」
「は、はぁ」
純君が私の後ろから動く気配がないので、仕方なく葛城君に話をする事にしました。
「葛城君、先に言いますけど。葛城君のお姉さまっていうのにはなれません」
葛城君はショック! という顔をしてその場に座り込んでしまったのですが、そんなに衝撃を受ける事ですか? 告白とかならまだしも、お姉さまですからねえ。
「そもそもの話、葛城君の“お姉さま”になるっていうことの意味が良くわかりませんし」
奈津子さんに聞いてみたら説明してくれたのですが、いまいち良くわからないです。
「はい、終わりましたよね。生徒会室に行きましょう」
純君が私の腕を取って視聴覚室を出ようとします。
「あ、葛城君。生徒会に入りたいなら私じゃなくて芹会長に言った方が良いですよ」
「「「は?」」」
何故か一年生三人に声をそろえて言われました。
「副会長の私より芹先輩の方が頼りがいがあると思いますよ?」
三人ともポカンとした顔をしていますけど、あれ……私なにかおかしな事言いましたか?




