第二百六話 落とし主?
結局体育祭が終わっても手紙の落とし主は現れませんでした。
封がされたままなので、渡していない手紙だと思うんですけどね。
「もらったのを無くしたっていう線もあるんじゃない?」
私なら早めに読みますけどねぇ。
あ、ちなみに今年も白組が勝ちました。
何と一点差。
びっくりですね。
余韻冷めやらぬ中、テントを撤収しようとしていると後ろをウロウロしている生徒がいるのに気づきました。
話しかけようとしては止め、帰ろうとしてはまた戻るという。
何と言うか、ええまあ。たぶん、そうですよね。
「早く戻らないと帰りのホームルームに遅れますよ?」
声をかけると、何故か飛び上がった後に地面に腰を抜かしたような形で座り込んでしまいました。
別に驚かそうとしたわけじゃないんですけど。
運動着の色からして一年生ですよね。華奢で可愛らしい子です。
「大丈夫ですか?」
うるうるした目が私を見上げ、口をパクパクしていますが大丈夫ですか?
「どうしたの? 陽向ちゃん」
修斗先輩と一緒にテント裏に来た芹先輩が片方の眉を動かしたところを見ると、知っている生徒なんでしょうか。
「君、確か……一年六組の葛城君だよね」
芹先輩がその名前を口にしたのが聞こえたのでしょう、純君と康君が顔を出しました。
「あれ、葛城君。どうしたの?」
ん? 君?
「君……って。もしかして男子ですか」
「ええ、葛城君は一応男子です」
純君が一応と付けるくらい、とっても可愛らしい子でした。
「テントの裏をウロウロしていたので声をかけたんですけど、驚いてしまって」
ごめんなさいねと言うと、葛城君は首をフルフルと振ってポロリと涙をこぼしました。
えっ、私なにかひどいことしました?
慌てていると葛城君がポッと頬を染めて、私を上目づかいで見つつ私に抱き着こうとしつつ叫んだのです。
「お姉さま!!」
は、はい?
修斗先輩と片倉さんに阻まれて、葛城君は大層ふくれっ面になりました。
「僕の手紙、読んでくれましたか?」
「……………え? これ私宛?」
透明な袋ごと持ち上げると、ひどくショックを受けた顔をしました。
「落し物として届けられていたし、宛名もなかったので……」
「えー? 本尾に生徒会の水崎先輩に届けてって言ったのに」
どうやら同級生に届けてくれるように頼んだようです。
そういえば女子だったような記憶がうっすらとありますね。
「本尾さん、落し物だって言っていたような気がするのですけど」
「葛城君。本尾さんに、自分の手紙だって言った?」
「……………言ってません」
どうやら、どこをどう間違ったのか葛城君から手紙を受け取った本尾さんは落し物と勘違いして届けたらしいです。
「まぁ、確かに陽向ちゃんに手渡してはいたよね」
「そうですね」
間違ってはないけれど、間違って届けられた手紙。
えーと。今、読んだ方が良いのでしょうか。




