第二百四話 借り物競走
一種目前ということは、もう次の種目の生徒が集まるようにと言われているはずです。
慌てて靴を履いていると放送部の高田さんがのんびりとした口調で「呼び出しはこれからですよぉ」と言ってマイクをオンにして借り物競走の選手の集合を呼びかけました。
「それじゃ、行ってきますね」
皆に手を振ってテントを出ようとすると、放送部も含めて皆が声をかけてくれました。
「気をつけてね」
「今からでも棄権して良いんだよ?」
「何でも良いから、借りるならこっちに来てね」
「全学年そろってるからね」
「男女もそろってますよ!」
「めがねなんかもあります」
えーと……ありがとうございます?
でも、生徒会が借り物競走の品物を決めているわけですから、こちらから借りるのはズルをしているような気になるんですけど。
「ところで大庭さん。さすがにトラックまでついて来なくても大丈夫ですよ」
ニッコリ笑顔で首を横に振られました。
小さくため息をついてスタート地点に行くと、大庭さんを連れているので一斉に視線を感じました。
そしらぬ振りをするスキルばかりが上がっているような気がしつつ、指定された四番目の列に並びました。
一年生がスタートすると会場が借り物をする生徒で騒ぎになります。借りるものが見つからないのか泣きそうになる生徒もいるんですが、芹先輩……何を書いたんですか。
私の組の番が来て、走り出し地面に置いてある紙を拾って開くと書かれていた言葉は「担任の先生」。
えーと……篠田先生ってことですよね。
キョロキョロとあたりを探してみると私のクラスの席にいました。違うところへ探しに行かなくてすんだのは良いのですが、目立ちます、目立ちまくりです。
意を決して自分のクラスの席へと走りました。
「あれ、陽向さんどうしたの?」
奈津子さんが気づいて前の方に来てくれました。
「これ……」
「え? あぁ。篠田先生、出番ですよー」
少々だらけた格好でイスに座っていた先生が、ビックリして飛び上がったのは……まぁ良いとしまして。
周りの生徒の視線がバッと集まりました。
「篠田先生。よろしくお願いします」
「あ、ああ。じゃ、行こうか」
「はい」
昨年から手を繋いでゴールするというルールになっておりますので、先生と手を繋ぐことになったのですが。
『キャアアアアアアアア』
黄色い悲鳴が一斉に上がりました。
「お姫様だっこしてゴールしようか?」
「余裕ですね先生」
「お陰様で、生徒会の陰に隠れて目立ち率が格段に下がったんでね。これくらいは平気」
まぁ、年上のお姉さま方が卒業してからは、芹先輩の人気は一年生が多数になりましたし、修斗先輩の人気は学年問わずですし。真琴は相変わらず女子からの人気が高く、真由ちゃんは男子からの人気が絶大です。中等部のファンもいるそうです。
「本当に生徒会って無駄に人気あるよな。助かってるけど」
「そうなんですよね」
そんな話をしているとすぐにゴールに着き、順位は二位です。篠田先生がクラス席にいたので探す手間が省けたのが良かったみたいです。
ゴールには大庭さんと芹先輩が笑顔で待っていました。




