第二百三話 遮って
昨年と同じように応援合戦が始まりました。
動きが前よりも洗練されたような気がします。
そしてシャッター音がやはり凄いです。
「明日の号外新聞楽しみだねえ」
「そうですね」
泉都門学園高等部の新聞部はネットに新聞を載せているのですが、イベントがあった翌日に号外として紙の新聞が発行されます。
これだけの人気なのですから、応援団も紙面に載るでしょう。
「明日も風紀委員大変だねぇ」
早良君はとうとう地面に手をついてうなだれてしまいました。
「今日のうちから整列のための道を作っておいた方がいいかもね。新聞部の部長に連絡しておくよ」
何処で配布するのかは聞いてみないとわかりませんものね。
「早く帰れると思ったのに……」
「早良……諦めろ」
ため息をついた後、風紀委員長と話をするために二人は帰っていきました。背中に哀愁を背負いながら。
ふと応援団の方へと視線を戻すと、日向先輩と目が合いました。甲田先輩が応援演武中なのですが、そちらを見ずにこちらを見ています。
さっと目の前に黒い物体が現れまして視界が遮られたのですが、振り返ると純君が私の後ろからカバーを付けたタブレットを持って顔の前に出していました。
「純君?」
「陽向先輩、お疲れでしょう? 奥に簡易のベッドが用意してありますから横になってください」
驚いて後ろを見ると、いつの間にかパーティションが置かれていて、その後ろにキャンプで使う簡易ベッドを少し大きめにした感じの物が置いてありました。
いつの間に……。
「ささ、陽向先輩」
「え、あの、別に疲れては……」
「午後からの借り物競争がありますから、それまで横になっていてくださいね」
「あの、だから純君、私の話を……」
「ご友人の方々が来られましたら、キャラメルをお渡ししておきますので」
「あの、だからね? 純君。話を……」
何故か大庭さんも純君に加担するように私を簡易ベッドまで連れて行こうとします。
「疲れてないってば」
「疲れたと思ってからでは遅いですよ、さささ」
簡易ベッドに座らされて。
「おやすみなさい陽向先輩」
純君が言った途端、何処から現れたのか折りたたみらしき支柱に黒い布を被せた簡易の天蓋みたいなものを付けられてカーテンらしきものを閉められてしまいました。
後で聞いた話では、本当は虫よけの蚊帳を吊る支柱なんだそうです。それに黒いカーテンを付けたものが私のために作られました。
薄い布一枚ですから、外からの声が普通に聞こえます。
そんな中で眠れるはずないじゃないですか。
ため息をつきつつも靴を脱いで横になりカーテンの隙間から差し出されたブランケットを被って半分自棄になりつつ横になったのですが。
起こされた時は、すでに借り物競争の一種目前でした。
あれ? 寝ちゃいました? 私。




