第〇二十話 入学式の準備です
準備というのは、とかく人員が必要です。
準備の準備。
現在、目の前にはお手伝いをしてくれる人たちがいます。生徒ではありません。学園が雇っている人たちです。
その人たちを使うのは、私たち生徒会なのですが。良いのでしょうか。ここは顧問の先生が指示を出すところですよね。
「後藤田先生は?」
「いつも通り」
つまりは来ないということです。
芹先輩は別件でいないので、役職的に私が支持を出さなければならないということですよ。
総勢三十名。
放送部や他のお手伝いの生徒を含めると四十五名。
生徒会を入れると、四十九名です。
康君と純君は芹先輩のお供でいないので、この人数です。全員いたら五十名超えましたね。
椅子を並べる仕事が多いので、その指示は簡単といえば簡単なのですが。装飾は指示する人のセンスいかんでイメージが変わってしまいます。
センスを私に求められてもこまるので、ここは真琴と真由ちゃんにお願いするとしまして。
私は地味にメジャーで椅子の間隔を計るための仕事をしましょう。
当日、壇上の後ろに大きな生け花が届くそうなので、それを置く台も運ばないといけません。
椅子がしまわれている場所は、ホールの地下です。
天井が低く広い、椅子専用のエレベーターで運ぶのですが、それを乗せる台車もハンパなく大きいので男性が二~三名ほど必要となります。
そしてそこまで運ばれてきた椅子ですが、パイプ椅子とかではありません。なので一脚が結構重いです。
エレベーターから一番近い場所まで運ぼうとすると、私なら少なくとも二回は休憩が欲しいところです。
ですから目の前にいる人たちはほぼ男性、しかも力自慢の方々がそろっています。
凄いですよ。
ひょいと三脚くらいを重ねて持つのは当たり前。
片手で二脚、つまりは四脚を持って小走りされます。
台車を使え……と言われるかもしれませんが、彼らいわく床を傷つける可能性があるし、自分たちが抱えて走った方が速い……と、とても良い笑顔で言われましたので、そうしてもらいました。
放送部がマイクテストをしている中、ブラスバンド部が楽器を運んで来ました。
今日の練習はホールでやるそうです。
椅子を運んでいた人が「これがいつも楽しみなんですよ」と良いながらニカッと笑います。
入場曲なのでテンポの良い曲です。それに合わせて動くと仕事が捗るのだとか。
途中一回休憩を入れて水分補給をしてもらいました。
最終チェックのために壇に上がって、椅子がずれていないかを見るのですが、一脚一脚丁寧に拭いているので時間がかかりそうです。
なるほど、芹先輩が「思っているより長くかかるよ」と言っていたのはこれなのですね。
手伝おうとしましたら、自分たちの仕事なのでと断られました。
では、この後、私は何をすればいいのでしょう? と困っていましたら、椅子に座って指示を出せばいいのだと言われました。
指示はもう出し終わってますので手持ちぶさたなのですよ。
真琴も真由ちゃんも指示を終えて戻ってきました。
三人共やることがないので来賓席に座って仕事の様子を眺めていましたが、どうしてもそわそわしてしまうあたり人を使うということに慣れていない自分は上に立つべきではないのではないかと、考えさせられました。
後で芹先輩に「慣れだよ慣れ」と言われましたが、慣れるのも何だか、怖いような気もします。




