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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇二話 ここにいる理由です

 そもそも、私は自宅から学園に通っていました。

 自転車通学です。


 それなのに、何故寮にいるのか。


 それは春休みに入ってすぐのことでした。

 カウンセリングに父も一緒に来ておりまして、その時に先生が言ったのです。

「少し、離れてみませんか」と。


 父が猛反対しましたが、そのことを聞いた理事長が「それなら丁度寮に空きがあるので」と話を進められました。

 理事長、どこからの情報ですか?

 

 カウンセリングの先生には色々考えがあるようでしたが、その説明は私にはされませんでした。

 

 一年間全く会えないというわけではありませんし、外出許可を取ればいつでも会えます。

 多少は心配ですが、父は自分で家事ができるので何とかなるでしょう。華さんも来てくれると言っていましたし。

 諭されたらしい父は渋々ですが寮に入ることを許可してくれました。

 この時、私はてっきり誰かと相部屋になると思っていたのです。真琴も真由ちゃんと同室ですし、そういうものだと思っていました。

 仮に一人だとしても二人部屋に一人……だろうと。

 

 しかし。現実は違いました。


 特別室っぽい雰囲気です。

 真琴と真由ちゃんの部屋に遊びに行ったことがあるので、二人部屋の大きさは把握しています。

 ここまで広くはありませんでした。


 寮監……荒田あらたさんとおっしゃるそうですが、荒田さん曰く、特別室は八階にあるそうです。

 これより凄い部屋ってどんなのですか。

 スイートルームみたいなのでしょうか。

 見に行きたい衝動にかられながらも、色々疲れそうなので椅子に座ったままため息をつきました。


 壁紙、床の張り替えも可と言われて、賃貸マンションですか! とツッコミを入れそうになりましたよ。

 ベッドは天蓋以外は取り替えられていると言われましたけど、だったら天蓋ごと持って行ってくれればいいのに……。


 とにかく、そういう経緯で私は寮に入ることになりました。

 週に一回カウンセリングに行くことはしばらく続きます。その時は寮から病院まで車を出してくれることになっています。

 理事長にお断りしたのですが、寮生が全員使っているので遠慮しないようにと言われました。

 そういえば以前真琴たちと出かけるときに使いましたね。あれ、生徒会特権じゃなかったのですか。

 

 色々変更してもらうので渡された書類にチェックを入れて署名します。

 引っ越しは学園から指定された業者を使います。

 セキュリティの問題があるそうで、そこ以外は入れないのだとか。

 日付と時間指定をして、書類を荒田さんに渡しました。

 

 引っ越しと言っても、家具はほぼ備え付けみたいなものですから、そんなに無いのです。

 指定された業者さんが見積もりに来て、不思議そうな顔をしていましたけど、見積もりしてもらうほど運んでもらうものありませんよ?

 興味があってどんな物を運んだことがあるのか聞いてみましたが、話してもらえませんでした。



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