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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百九十六話 ありがとうという言葉



 朝、奈津子さんと一緒に登校しまして私は生徒会室に行ったのですが、珍しく風紀委員顧問の蓮見先生がいました。


「あ、おはようございます、蓮見先生」

「あぁ、おはよう。久しぶりだな」

 芹先輩となにやら話をしていたようですが、その話は終わってしまったらしく丁度帰るところだったようです。

「篠田が心配していたぞ。俺の所に何度も来て、何とかならないのかってな」

「すみません」

「いや、こちらとしても何とかしたかったんだけどなあ。すまん」

 プロの忍者がかかわっていたのですから、どうしようもなかったんです。

「ご心配をおかけしました。本当にすみません。もう終わりましたから」

「ん。……それ、篠田にも言ってやれ、安心するだろうから」

「はい」

 体調も少しずつ戻ってきていますし、これからバリバリ仕事しますよ。

「そうだ、こっそりやってるみたいだが口止めされているわけじゃないので、言っておく」

「はい?」

「後藤田が、願掛けしてたみたいでな」

「願掛け?」

「甘いものをずっと食べてないそうだ」

 意味がわからずにポカンとしていると、蓮見先生が笑って説明してくれました。

「自分の好きなものを絶つことで、お前の身の安全を祈ってたらしいぜ」

 あの、無類の甘い物好きの後藤田先生が?

 私のために?

「なあ、水崎。お前は自身が考えている以上に皆に心配されてるんだぞ。それは誰でもない、お前自身が作ってきた人間関係だろう。もっと頼ってもいいんじゃないか?」

「あ、ずるい蓮見先生。それは僕も言おうとしてたのに」

 芹会長が頬を膨らませて言うと蓮見先生は鼻で笑いました。

「ふん、こう言う時は大人にまかせるもんだ」

 何故かとっても偉そうにいうものですから、芹先輩と笑ってしまいましたよ。

「本当に、皆さんにはお世話になりっぱなしで」

「陽向ちゃん、違うよ」

「え?」

 謝罪に回らなくてはならないと考えていたのですが。

「違うな、水崎」

 何故か二人ともニヤリと笑いながらいうものですから、冷や汗が出そうになりました。

「えーと、間違ってます?」

「「そう言うときはありがとう」」

「でしょ?」

「だろ」

 謝罪などいらないと言われて、鼻がツンとしました。

「感謝をするということは、相手を受け入れるということだ。本来は強制や義務じゃない。謝罪とも意味が違う。わかるな?」

「は、はい」

 自分もありがとうと言われた時の気持ちを知っています。だからこそ、先生の言っている意味も全てではないにしろ理解できました。

「あ、ありがとうございました」

「……なんか強制したみたいになったな、すまん」

「いえ、違うんです。本当に、ありがとうございます」


 皆の暖かさとか優しさとかが急激に自分の中に入ってきたみたいで、涙がこぼれました。

 


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