第百九十話 週末の朝
パッチリと目を覚まして時計を見ると、午前六時。
私が半身を起こすと大庭さんが気配に気づいたのか隣の部屋から寝室に入ってきました。
「おはようございます」
「おはようございます、今朝はいい天気ですよ」
カーテンを開けてもらうと、確かにとてもいい天気です。
「秋晴れですね」
「天気予報では暖かくなりそうですから、テラスでやることになりそうですよ」
中庭に面した広いテラスがあって、小規模のパーティを時々開くのだそうです。さすがに冬は寒いのでやらないでしょうけど。
「そうですか」
「膝掛けは持って行きましょうね」
「はい」
食堂へ行く途中の窓から、テラスの掃除をしている人たちが見えました。まだ午前七時にもなっていないと言うのに、凄いなと思っていると掃除をしていた人たちが私に気づいて一斉に挨拶をしてくれたのです。
「「「おはようございます」」」
「おはようございます、陽向様」
「皆さん、おはようございます。食事が終わったら手伝いますね」
挨拶を返してから言うと、全員プラス大庭さんが何故か必死になって「トンデモナイ」とテラスへのガラス戸を閉めてしまいました。
「まだ本調子じゃないのですから、無理はなさらないでください」
「すみません……」
食堂へ入ってしばらくしてから、昨日の夜こちらへ帰ってきていた奈津子さんが息を切らせてやってきまして。
「お願いだから、何もしないで座ってて!」
私の両肩に手を置いて泣きそうな顔で言われるので、私は素直に頷きました。
何度か奈津子さんの前で倒れたりしていますし、相当な心配をかけてしまっているのはわかっています。
「陽向さんが変なこと言うから、たたき起こされたじゃない……もう」
二人で笑いあって朝食を一緒に取っていると、今日のパーティに招待された人のリストを持って、久保さんが入ってきました。
「おはようございます、お嬢様方。こちらがリストです」
二人に渡されて同時に見ると、友人の他に私の家族も招待されていました。
「奈津子さん……」
「ふふふ、驚いた? ご家族の皆さんにも秘密にしててもらっていたの。あと数時間で会えるわよ」
「うん……ありがとう」
泣きそうになったのを誤魔化してスープを飲むと、気管に入りそうになってせき込むという事もあったりしましたが、概ね何事もなく朝食を終えました。
朝食後は筋力を衰えさえないために、様子をみながらの散歩です。
あちこちで木々が色づいて来ているのがわかります。
後一ヶ月もしたら、紅葉になるのでしょう。
木に止まっていた鳥が飛び立ったのを、私は何とも言えない気持ちで見送っていました。