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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇十九話 三人で夕食です

 真琴と真由ちゃんが来る前に箱を開けてみましたら入学式と新入生歓迎会で使う腕章でした。


 新入生は生徒会の特別制服を知らない生徒も多いので、この二つの行事では腕章を付けることになっているそうです。“高等部生徒会”と書かれています。

 食べ物ではないと言われていましたけど、ちょっとホッとしまして。クローゼットにしまいました。

 入学式は明後日になります。準備で忙しくなりますね。

 卓上カレンダーを見て今後のスケジュールを確認した後、部屋着に着替えて私はベッドで少し休んでおくことにしました。二人が来るまでにはまだ時間がありますから。眠れるでしょう。

 寝室に入ってベッドに横になると、保健室で結構眠ったはずなのに、考え事をする暇もなく寝たみたいでした。


 ポーンという来訪者を知らせる音で目が覚めて、慌ててドアを開けに行きました。

「ごめん、寝てた」

「大丈夫だよ、夕食はまだ来てないから」

 起き上がりの、もさっとした髪のまま出たものですから真琴に笑われてしまいました。

 身支度を整えて椅子に座った時には真由ちゃんがお茶を淹れてくれていまして、礼を言って一口飲むとその温かさにホッとしました。

「体調はどう?」

「だいぶ良くなったよ」

「顔色もよさそうだね」

 休んだのでだいぶすっきりしました。

 お菓子でも出そうかと思ったのですが、夕食前であることを思い出して静かにお茶を飲むことにします。

「明後日は入学式だね。あれから一年たつのか」

 なんてしみじみ真琴が言っています。

 でもそうですね。

 今年は穏やかにすごせることを願います。

「今年も中庭の桜、楽しみだね」

 真由ちゃんが頬を染めていうものですから、可愛くて抱きしめました。

「楽しみね」

「今年は歩きながら見とれたりしないでよ。また誰かにぶつかるよ」

 昨年、桜を見ながら歩いて静先輩にぶつかったりしましたね……。

「あ、あれは先輩も同じく桜を見てたから、ぶつかったのであって……」

「はいはい」

 私だけのせいじゃないです……。

 でもそれだけ中庭の桜は綺麗なんですよ。


 トントンというノックの音がして、ドアを開けに行きましたら笑顔のメイドさんがいました。以前お茶を運んできてくれた人ですね。

「ご夕食を運んで参りました」

 あ、そうでした。

「どうぞ」

「失礼いたします」

 入って来たのは四人、そしてカート二つ。

 二つ? 三人分なのに? と疑問を持ちながらも椅子に座りました。

 テーブルに運ばれた料理は二種類。

 真琴と真由ちゃんは白身魚のムニエル春のソース添え……春のソースってなんですか。その白身魚、鯛ですよね?

 そして私の前に置かれたのはすき焼き御膳。

 すき焼き御膳!? そんなの学食でも寮の食堂でも見たことありませんよ!

 びっくりして隣にいた真琴を見ると、苦笑してメニューを見せてくれました。

「これは部屋に頼む用のメニューだよ」

 学食や食堂より豪華ですよ……何故に!?

「家族と食べる人もいるからね」

「は、はあ」

 そういえば、許可さえあれば家族が寮に入れるのでしたね。

 目の前に置かれたすき焼き鍋……一人用。

 自分で作るのかと思いきや、メイドさんがてきぱきと作っていくのを見ているだけです。

 卵も割ってくれた上に、きちんとといてくれました。

「口にお運びいたしましょうか?」

 と言われた時には、さすがに首を勢いよく横に振りましたよ。

 そこまで病弱じゃないです!

 っていうか、最初に口に運べっていった生徒でてこい!

 ハリセンをおみまいしてくれるうう!


「どうしたの? 陽向」

「……何でもない」


 深いため息をついて、私は箸を手に取りました。

 

 食事が終わったら取りに来てくれるのかとおもいきや、私たちの食事が終わるまで部屋にいました。

 お茶を淹れてくれて、おかわりを言わずともお茶が少なくなったなと思ったら注いでくれます。

 美味しかったです、美味しかったのですけれど。

 なんだかぐったりしました。

 ふ、普通に食べたい。


 なるべく食堂で食べようと心に決めた日でした。


 

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