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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百八十六話 手紙



 今日も湯江家からの登校です。

 と言えたら良かったのですが。


 熱は下がったのに外出を許してもらえませんでした。

 

 仕方ないのでベッドに横になっているわけですが、睡眠をとりすぎて眠れないという、一部の方から苦情が入りそうな状態なわけであります。

 ふと、昔、父と一緒に歌った歌を口ずさんでいると、大庭さんが入ってきてミネラルウォーターをくれました。

「懐かしい歌ですね。童謡ですか」

「昔、父に教えてもらったんです」

 確か幼稚園からの帰りだったと思います。

 夕焼けの中で聞いたこの歌が、何故か寂しげに聞こえたんです。メロディは特別悲しく聞こえるわけでは無かったのに。

「中学生の時にその話をしたら、父と母の思いでの曲だったらしくて」

「あぁ、お父様の心情が曲に出てしまったんですね」

「ええ」

 今でもこの歌を歌うと切なくなります。

「軽く歌っただけなのに、何だか疲れました」

「ご飯の時間になりましたら、起こしますから。それまでお休みください」

「有り難うございます」

 

 次に目を覚ますとお昼前で、昼食と共に手紙が届けられました。

「誰からでしょう?」

 受け取って裏を見ると“佐曽利椎名”と書いてありました。

「あぁ……椎名君」

 若尾君のお友達でしたね。

 手紙の内容は若尾君の行動を友人として謝罪する旨と若尾君本人が謝りたいと言っているとのことでした。

 あれはつい叫んだ自分の失敗なのですから謝ってもらわなくとも良いのです。

 若尾君から直接の手紙だと届けてもらえない可能性が大なので自分が手紙を書いた……と終わっていました。

 この手紙、どういう経由でここに届いたのでしょう?

「経由ですか?」

「ええ」

「ここへは久保さんが持って来られたと思います」

「あぁ久保さん」 

 と言うことは奈津子さんからということでしょうか。

「久保さんをお呼びしましょうか?」

「こちらに帰っているんですか?」

「はい」

 湯江家専用の携帯で久保さんを呼びだしていました。

 すぐに久保さんが来てくれて、説明してくれたところによりますと、椎名君はどうやら速水君にお願いしたようです。速水君から奈津子さんへ奈津子さんから久保さんへ……ということですね。

 明日学園に行くつもりですが、会えるかどうかわからないのでこちらも手紙を書くことにしました。

「すぐに届けて参ります」

「いえ、学園に用事がないなら急がなくても良いんです」

「奈津子様から陽向様の顔を見てくるようにと言われております。どちらにせよ戻りますので」


 それではとお願いして、手紙を託しました。



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