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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百八十話 木柳屋家



 キヤさんのお兄さんは湯江家お抱えの運転手だそうで、護衛も兼ねているとのこと。

「柳がしばらくはお前の専属になる」

「……え?」

「学園までの送り迎え、外出全般。柳が運転する車で移動だ」

 つまりのところ、キヤさん兄弟が私の専属となるというわけですね。

「はいー?」

「……。最近壊れてないか? 陽向。……奈津子はほとんど寮だ。休日に戻ってくることはあっても、久保の運転で学園に戻るのは月曜日くらいだろう。それ以外は柳の車だ」

 決定事項らしいです。

 片倉さんもいますし、自転車で……何て言ったら怒られますよね。

「陽向様、ご友人がいらっしゃる前にお召し替えなさいますか?」

「……いえ、このままでいいです」

 奈津子さんは友人が来る度に着替えるんですか?

 一応、普段着よりは少し良い服着てるんですよ。


「用意は調えてございますので、そちらへ参りましょうか」

「え? ここじゃないんですか?」

「はい、特別親しいご友人とお聞きしましたので。和泉様もどうぞそちらへ」

「わかった」

 今日は奈津子さんが和香を連れて来てくれることになっていますが、次からは柳さんが直接迎えに行ってくれることになるんですね。

 何だか申し訳ないような……。


「腕によりをかけさ……ゴホンッ、失礼しました。腕によりをかけましてパティシエがお茶請けを作りましたので」

 今、かけさせてと言い掛けましたね? キヤさん。

「あぁ、パティシエは木柳屋の弟なのか」

「はい、なつめといいます」

「……キヤさんの兄弟全員、湯江家で働いているんですか?」

「兄弟だけではなく家族全員ですね」

「……そ、そうなんですか」

 それぞれ所属しているところを教えられましたけど、随分と家族多いんですね。

「そろそろお着きになる頃ではないでしょうか。さ、お部屋の方へ参りましょう」

 キヤさんに案内された場所は、先ほどの部屋よりも少しこじんまりしていましたが、大きな声を出さなくても話ができるような距離でソファが配置されていました。

 全体的に落ち着いた感じの色で、ソファに座ると膝掛けを渡されました。

 実は部屋を出るときにモコモコのスリッパじゃないと許可できないと言われて履き替えておりまして、今渡された膝掛けも駆けると、肩に薄手のポンチョみたいなのをかけられました。

 えーと。特に寒くないですよ?

「先生に、急激に体重が減った方は体温が不安定になりやすいと教えていただきましたので、汗をかくほど暑くなければ、そのまま身につけていただきたいのです」

「わかりました。有り難うございます」

 すっと晃先輩が私の手を取って、反対側の手で甲を撫でました。

「手が冷たいな。木柳屋、体が温まるものを頼む」

「畏まりました」


 自分では意外とわからないものですね。

 晃先輩の手のぬくもりに、自分の手が随分と冷たかったのだと知りました。



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