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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇十八話 箱の中身はなんだろな

「これ……」

 お重にびっしり入った俵型の塩むすび。

 違うのを開けますと、きんぴらごぼうと煮物の二種類が入っています。

「みんなで食べたんだけど、あまりに数が多くてさ。風紀委員にもおすそわけしようかと思って」

「その方が良いかと思います」

 私の前に積まれたお重は全部で二十個。

 そのうち七個を六名でなんとか完食したとか。

 つまり、残りは十四個。

 お腹にずっしりときそうなものが入っていそうです。

「私ひとりで十四個とか無理ですよ」

 そしてまた見あたらない一年生はどこへいったのでしょう。

「芹会長。一年生は?」

「例の割り勘分をもらいに行かせた」

 あぁそうでした。後藤田先生が買ってきた差し入れもあるんでしたね。

「乾きものは良いとして、このケーキとか食べないといけないし……」

「後藤田先生に差し入れ禁止令を出しましょう」

「そうだね」

 だいたい、後藤田先生が差し入れを持ってくるときは自分が食べたい時なんですから。


 いっそのこと、後藤田先生と蓮見先生でスイーツ同盟でも結べばいいんですよ!


「何でこの箱エクレアばっかりなんです!?」

 白い箱を開けますと、エクレアが二十個。

「こっちはシュークリームなんだ……」

「まさかそれも二十個?」

「うん、こっちはタルト。さすがに十個だけど」

 確実に一万超えてます。

 さらにクッキーなどもあるので、か・く・じ・つ・に一万超えてます!

「生徒会の運営資金をなんだと思ってるんですか、後藤田先生は!」

「陽向、落ち着け。また熱が出るぞ」

 修斗先輩が心配そうに言って、私をソファに座らせてくれました。そして隣に座って、食べ物をお皿によそってくれました。

「お腹すいたろう?」

 くぅうぅぅぅぅ。本当に修斗先輩って優しい!

 半泣きで受け取って食べたきんぴらは、悔しいことにおいしかった!

 おいしいものに罪はありません!

 しかし、お重一つ分も食べれずにお腹一杯になってしまいました。これ、体育会系男子に喜ばれそうなくらい、がっつりしたおかずです。

 女子には重い……。

 考えてみれば、理事長には息子さんしかいないわけで、晃先輩はたくさん食べる方ですから、それが基準となったのでしょう。

 そりゃ晃先輩が八人いたら、二十個のお重の中身をペロリと食べてしまうかもしれませんけど……。

 少し胸が苦しくなって、箸を置きました。

「大丈夫か? 陽向」

「は、はい。お腹いっぱいです」

 そう答えたのに、何故か修斗先輩はハンカチを渡してくれました。

「涙」

 ハッとして頬に手を当てると水に触れました。

 いつの間にか泣いていたようです。

「水を飲めるか?」

「はい」

 ハンカチで涙を拭いてから、もらったお水を飲みました。

「今日は寮に帰って休みなよ、陽向ちゃん」

「はい。そうさせていただきます」

「うん、理事長と後藤田先生には僕がきちんと言っておくからね」

「はい」

「修斗、女子寮前まで送って」

「あぁ」

「いえ、一人で……」

「熱出てたんでしょう? 無理はしないの」

「……はい」

 頷いて顔を上げると、芹会長はにっこり笑って頭を撫でてくれました。

 芹会長とは同じくらいの背丈なのですが、私がソファに座っているので丁度良い高さのようです。

「明日も体調が悪かったら、きちんと報告すること。いいね?」

「はい」

 無理をすれば後々困るのは私だけではないのです。

 そこはきちんとしたいと思います。

「それから、これ」

 芹会長から渡されたのは白い小さな箱。

「食べ物じゃないですよね?」

「うん、そこは安心して。あ、そうだ夕食は部屋に届くように手配しておくからね。真琴君と真由ちゃんも一緒で良いよね?」

「はい、その方がうれしいです」

 一人で食べると余計なことを考えそうで怖いです。

「うん、それじゃ。また明日ね」

「はい、お先に失礼します」

 

 修斗先輩に送られて女子寮に着き、自分の部屋に戻った頃。芹先輩からのメールに気づきました。

“焦っちゃダメだよ”

 芹先輩も優しい人です。


 誰もいないのに、大きく頷いた後。

 私は携帯に頭を下げました。



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