第百七十八話 新しい腕輪
おあずけをくらった後、きちんとウドンを食べまして。色々と身体に優しいものが入っていたらしいです、はい。
昼食を終えて応接間のような所へ行くと、唯一さんが今日来た理由を教えてくれました。
「ブレスレット壊れちゃったって聞いたもんだから、新しいの持ってきたよ」
「え? 傷が付きましたけど、壊れては……」
「壊れたよね?」
「いえ、傷が……」
「壊れたんだよね?」
「…………陽向様」
私の横でため息をついた執事さんに暗に促されて仕方なく頷きました。
「今度のは、さらに頑丈にできてるんだ」
そう言って見せてくれたのは、もはやブレスレットではなくバングル……いえ、これは何と言ったらいいのでしょう。
一つは金のリングが幾重にも重なってくっついた感じで、もう一つは螺旋になっているんです。
留め金がないのでやはりバングルでしょうか。
「こっちをつけてみて」
留め具がないのでブレスレットを外してから手を通してみます。
何とか入ってホッとしていると外した方のブレスレットは回収されてしまいました。
「大丈夫のようだね。それじゃ、こっちもつけてみて。こっちはちょっと特殊なんだ」
螺旋になっている方を付けると不思議な肌触りでした。
「一番端に小さいボタンがついているでしょう」
「あ、はい」
「押してみて」
言われた通りに押すと、さっきまで螺旋上に腕に付いていたのに紐のように柔らかくなりました。
「な、なんですかこれ」
「んー、まぁ企業秘密。これはチェーンの代わりに刃物なんかを避けるためのだよ」
もう一度ボタンを押すと、さっきの形状に戻ります。
「いつも、絶対必ず持ってもらうにはどうしたら良いかって、陣海総出で考えてねぇ」
「は、はあ」
「前のと同様にグローバル・ポジショニング・システムが組み込まれているからね。緊急時のお知らせは……このボタン」
「ぐ、ぐろーば?」
「あぁ、グローバル・ポジショニング・システム。略すとGPS」
なるほど、勉強になりました。
GPSとしか覚えていませんでしたよ。
「ちなみに日本語で言うと、全地球測位網ね」
ありがとうございます、メモメモっと。
「よし、設定完了。どう? 重すぎたりしない?」
「いえ、大丈夫です」
腕を振ってみましたが、特に支障はありません。
「防水加工もしてあるから、お風呂にそのままでも大丈夫だよ」
「は、はあ」
「どう? これから試してみな……ぐふっ」
いつの間にか執事さんがぬいぐるみを唯一さんの顔に押し付けていました。
「美奈さまより、唯一さまへと申し付かっておりましたのを忘れておりました」
ぬいぐるみから顔を離して唯一さんが顔を上げると執事さんが不敵に笑います。
「一か月に一度の定期検査には、別な方が来るとのことでした」
現在の状況を想定して美奈さんが用意してくれたぬいぐるみのようです。
モフモフしているのはわかりますが、これ何のぬいぐるみでしょう?
唯一さん、微暴走w