第百七十七話 お昼時のお客様
さっそく次の日和香に連絡すると、会いたいと言われたので、奈津子さんに確認して許可が取れたらと言うことになりました。
朝食を奈津子さんと一緒に食べたので、聞いてみると迎えに行ってくれるとのことでした。
和香に湯江家に直接来てもらうとセキュリティの問題で色々面倒になるそうで、今回は特別に車で迎えに行ってくれる事になったのです。
「奈津子さん、色々ありがとう」
「何を言ってるのよ。まだまだ返せてないわ」
十分ですのに。
奈津子さんは笑って、私が今滞在している部屋の方を指しました。
「部屋に戻って寝ててね」
「……はい」
今日は授業があるのですが、大事を取ってお休みすることになっています。
なので、和香は放課後ということになりますね。
奈津子さんは和香に会ったことがあるので、大丈夫でしょう。
朝食を取ってすぐに寝るというのはどうなんでしょう……と考えているうちに眠っていたらしく、お昼に起こされるまでグッスリでした。
自分でもびっくりです。
晃先輩は大学部に用事があるので奈津子さんと一緒に久保さんの運転する車で出かけてしまいましたので、お昼ご飯は一人で取ることになっていましたのに食堂へ行くと、何故か陣海唯一さんがいまして、丁度お茶を飲んでいたようで左手にカップがありました。
「こんにちは」
唯一さんがそう言ってニッコリと笑い、カップを置くとすぐにそれが片づけられ昼食の準備が始まりました。
向かい側の席の椅子を引いて促されたのでそちらに座りましたが、唯一さんが何故この時間にいるか不思議でじっと顔を見つめてしまいました。
「しばらく見ないうちに、げっそりしちゃったね。僕は柔らかい方が好きだなぁ」
周りで昼食の用意をしていた人たちの動きが一瞬止まったように見えたのは目の錯覚でしょうか。
「あの……」
「うん、まずはお昼ご飯食べてからにしよう」
唯一さんの昼食はそば粉のガレットでしたが、私のはウドンでした。いえ、別にガレットが食べたかったとかそう言うわけではなくてですね……嘘を言いました……ちょっとだけ食べてみたかったです。
私の視線を感じたのか、唯一さんが少し微笑んで端っこを切り分けました。
「はい、あーん……と行きたいところだけど。体調が回復したらね?」
おあずけでした。
ううう、私のガレットが……。
「陽向様。ガレットはいつでもお出しいたしますので、今はご体調を回復させることをお考えください」
よっぽど食べたそうにしていたのでしょう、執事さんに言われてしまいました。
も、申し訳ないです……。