第百七十一話 休日
「片倉さんが運んでくれたんですか」
「まぁ、護衛としての許可はもらってるし、飯塚のお二人もいて更に奈津子お嬢様も立ち会いの元だからってのもある」
寮監さんももちろん一緒に来て、寮を出るまで確認されたそうです。
片倉さんなら、いくらでも誤魔化せるとは思いますが。
「速水っていったっけ? 相当心配してたぞ」
速水君に、しがみつくような形で泣いてしまったので、少々顔を合わせるのは恥ずかしいのですよ。でもお礼は言わないといけませんよね。
「ま、何にせよ元気そうで安心したよ」
「すみません、ご心配をおかけしました」
「友達の前で泣いて良かったんじゃないか? 俺ならどうすればいいかわからなかったし」
「そこはわかりませんけど。でも、泣いてすっきりしたところはあります」
そうか……と言って片倉さんは笑ってくれました。
誰かが目元を冷やしてくれたらしく、目立って瞼が腫れることもなくすみました。
今日は学園祭の振り替え休日なので、学校はお休みです。
本当なら自宅に帰りたいところなのですが、もう少し外出はひかえるように言われています。
そうなりますと、必然生徒会の仕事をすることになるのですが、芹会長からきちんと休むようにとメールが届いていました。
「何もやることがない……」
中間テストはまだ先ですが、ここは勉強でもしておきましょうか。
「……。勉強が趣味か?」
「趣味ではないですけど」
ちなみに、今日の片倉さんは相も変わらず窓からの登場でした。
「だって入口からだと色々手続きが面倒くさいんだって」
「はいはい」
片倉さんに護身術でも習おうかと思いましたが、寮なので階下にも生徒がいます。あまりバタバタしては迷惑ですよね。
「お昼はどうしますか?」
「お気遣いなく。ところで、午後から時間あるならカフェに行かないか? 早い時間にしまるとはいえ、休みでも開いてるんだろ?」
「ええ、開いてると思います。それならお昼をカフェにしますか?」
「良いのか?」
「ええ、早めに行けば混む前に食べれると思います」
休日のカフェは平日より混むことが多いので、お昼より早めか遅めに行くと席が空いています。ただしランチは限定数があるので遅くいくと食べれないこともあります。
「サンドイッチなら限定は無いんですけどね」
休日限定ランチで、結構人気があるんです。
「んじゃ、早めに行こうか」
「そうですね」
ランチは11時半からですが、カフェ自体はもう開いています。
時間までお茶でも飲みましょうか。