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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百六十九話 涙の五秒前



 きちんと説明を求める前に、他の生徒会役員が来て私の帰りを喜んでくれたので、聞けないまま仕事が始まってしまいました。

 昨日着ていた雪女の服は袖が少し破れてしまったので奈津子さんにお願いして衣装係の生徒に渡してもらうようにお願いしました。

 先ほど連絡が着まして、直したので時間が出来たら来てほしいと言われました。

 結局二日目は何もできなかったので、最終日くらいはと思いまして、テントに移動する時間があるので、その時に少しだけ芹会長に時間をもらって衣装を着てきました。


 今年も大学の先輩から見学に来ないかというお誘いがあったのですが、私は行けない状況だったので純くんと康くんが行って、中等部への差し入れは真琴と真由ちゃんが行って来た、そんな二日目だったそうで。

 三日目も何事もなく終わり。


「あぁぁぁぁ、どこも回れなかったぁぁぁ」

 私の嘆きがテント内に響き、皆に笑われてしまいました。


 学園のすべての大門が閉められて、風紀委員による巡回の後、学園祭終了が言い渡されました。

 今頃速水君たちはぐったりしている頃でしょう。お疲れさまです。

 私たちは昨年同様学園の屋上へと向かいます。

 恒例の花火を見るためです。

「今年は新しいのを買ったとかで、楽しみにしていてくださいって言われてるんだ」

 芹会長の言うとおり、にっこりマークの花火があがったりして歓声や拍手が聞こえます。


 満喫する前に、とうとう学園祭が終わってしまいました。


 花火を見上げながら、私は何とも言えない気持ちになってしまい、涙が出そうになりました。

「陽向?」

 真由ちゃんと真琴が気づいて抱きしめてくれます。

「ありがとう……ね」

「大丈夫だよ陽向」

「うん」

 祭りの後はやはり何度経験しても寂しいものです。


 私たちは花火が終わって全員で屋上を出ました。


 学食で夕食を取っていくとのことでしたが、私は食欲がないので先に寮へと帰ることにしました。

 片倉さんが後ろをついてきているのはわかっていましたが何もしゃべる事無く生徒玄関で靴を履きかえようとしていると、誰かが走ってくる音が聞こえました。

「あぁ、良かった陽向ちゃん」

「は、やみくん」

「ちょっとだけ良いかな? あ、顔色悪いね。大丈夫?」

「平気……ごめん、また今度」

 顔を逸らして寮へ急ごうとしました。

「待って陽向ちゃん。はい、これ」

 速水君が手渡してくれたのは、透明な袋に入ったクッキーでした。

 

「これ……お化け屋敷をクリアした人に渡すはずの」

「うん、皆から陽向ちゃんにって」

「…………。今年は去年より色んなところを回りたかったの」

「うん」

 次に鞄から何かを取り出した速水君は、私にSDカードが入ったケースを渡してきました。

「これは?」

「せめてと思って。色んなところの写真を皆で撮っておいたよ。帰ったら見てみて」

「うん……ありがとう」

「それから、今日も忙しいだろうからって。火曜日にみんなで写真撮ろうって委員長が言ってたよ」

「……うん」

 本当は部屋に戻って一人で泣くつもりでした。


 でも、もう泣いちゃって良いですよね?



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