第百六十八話 家の話
久保さんに湯江家の車で、まずは父を家まで送ってもらい、その後学園に向かいました。
寮の前で奈津子さんと久保さんと別れまして、片倉さんと生徒会室に向かいました。とっても久し振りな感じです。
ドアを開けるとすでに芹先輩と修斗先輩がいまして、こちらを見ると二人とも笑顔で迎えてくれました。
「せ、芹先輩、修斗先輩」
「お帰り、陽向ちゃん」
「お帰り、陽向」
芹先輩が駆け寄ってきて私を抱きしめます。
「大変だったね。もう大丈夫だよ」
「芹先輩、ありがとうございました」
「うん、でもギリギリになっちゃってゴメンね」
「いえ、修斗先輩が守ってくれました」
「うん」
援軍は更科家の人だったそうで、芹先輩が一条家の当主を説得してくれたそうです。
本当なら他家に送ることなどないそうなので、芹先輩のお陰ですよね。
「さすが更科、動くと速い。俺たちもまだまだだな」
片倉さんが楽しそうに笑って言うと、芹先輩が私から離れて肩をすくめるとニヤリと笑いました。
「更科から合同訓練のお誘いがありますが、どうです?」
「え?」
「例の訓練場をぜひ見たいって」
「…………もしかして、それが交換条件だったり?」
「ノーと言われれば退きますけどね」
芹先輩の言葉に片倉さんが片方の眉を上げます。
「忍者の数が減っている昨今、それぞれの縄張りがあるために技術が失われつつありますよね」
小首を傾げながら可愛らしく言う芹先輩に、片倉さんは苦笑をこぼしました。
「はぁ……まぁ更科に比べると俺たちの里は若い部類になるし、願ったり叶ったりだけど。更科はそれで良いのか? いつ敵対するか分からないのに」
「自分は下っ端の方だから、上の意見に従うまで」
修斗先輩は静かに言います。
「なるほど」
「今回の騒動のお陰と言っては何ですが、湯江家と縁を結ぶことができそうですし。そうなると、お互いに通じていた方が良いでしょう……と言うことですね」
芹先輩が言い終わると、少しの間を置いて片倉さんが目を丸くしました。
「えっ!? ちょ、ちょっと待て。うちのお嬢さんと?」
「……たぶん、そうなるかと」
「ええええええええええええええ」
何に驚いているのか分からずに、私はポカンとしていました。
「待て待て。まだあれから三日くらいしか立ってないぞ。いや、立っていませんよ」
何故か敬語になる片倉さん。
えーと、あの。何が何やらさっぱりわからないのですけど?
「一条家は!?」
「従兄弟がいます」
「いやいやいやいやいや」
「元々身体が弱かった僕は、除外されていたようなものですし」
「いやいやいやいやいや」
片倉さんが冷や汗をかいて、首を横に振っています。
「別に片倉さんが決めるわけではないでしょう」
「そ、そうですけど」
「それに、かもしれないっていう話でして」
「“そうなるかと”って言いましたよね!?」
何故かどんどん敬語になってますけど、大丈夫ですか片倉さん。
「これを機にと話を通したのはボクですし、ボクが行くのが筋でしょう?」
あの、ですからそろそろ私にも何のことなのか教えてもらえますか?
お二人とも。