第百六十七話 学園祭最終日朝
次の日、目が覚めて愕然としました。
だっててっきり学園祭二日目だと思っていたのに、目が覚めたら最終日だって教えられたんです。
昨日目が覚めた時が二日目の午後九時だったようです。
「全部終わってたーとかじゃなくて良かったじゃないか」
片倉さんがそう言ってくれますけど、楽しみにしてたんですよ。とっても楽しみにしてたのに。
「すごく悲しいです、でも父に言うと父が泣いちゃうので秘密にしておいてください」
「りょーかい」
これから朝食に向かうというのに、ため息をついていては皆さんに心配をかけてしまいます。
「ため息をまとめてしますので、少々お待ちを」
「……ため息をまとめてするって奴、初めて見た」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……と息が続く限りのため息をつきまして。
頬を軽く叩いてから顔をあげました。
「さて、行きましょうか片倉さん」
「ほんと……陽向って面白いな」
私は全然面白くないです。
「今日は、皆さんにご迷惑をかけた分、キリキリと働かないといけないのですから、しっかりと朝食を取らないと」
食堂へ行くと父がすでにいました。
そうなんです、父も湯江家に滞在中なのでした。
ちなみに華さんと龍矢さんは、私が目が覚めたと分かった時点で家に帰りました。父も朝食を取ったら家に帰るはずです。
「おはよう、陽向」
「おはよう、お父さん」
隣に腰かけると、給仕の方が近づいて来て朝食の用意をしてくれます。
奈津子さん達はまだ起きていないようですね。
まぁ、六時半なので仕方ないとは思いますけど。
「片倉さん、おはようございます」
「おはようございます」
片倉さんは私の斜め後ろに給仕の方に迷惑が掛からないような位置に立っています。
朝食を一緒に取らないのかと毎回思うのですが、外出中など以外ではあまり一緒に座らないんですよね。
「「いただきます」」
父と声をそろえて言うと、純和風の朝食をいただきました。
「今日は家に帰ってから出勤するの?」
「あぁ、今日は遅くなるから待っていないで寝てるんだよ?」
湯江家に帰って来ること決定のようです。
「うん」
頷くと頭を撫でられました。
「無理しないように。約束だよ」
「わかってる」
これ以上皆さんに心配をかけるわけにはいきませんし。
「きちんと休憩とるから、心配しないで」
父は苦笑いすると片倉さんの方を見ました。
「お願いしますね、片倉さん」
「お任せください」
私だと信用できません?
まぁ……心当たりがなくもありませんが。
「常時ついて歩くことになりましたからご安心を」
「えっ? 学園内でもですか?」
「理事長から許可が下りたから」
「特別扱いすぎませんか」
奈津子さんですら護衛を付けていませんのに。
「何しろ、学園の生徒があんたに……君に危害を加えようとしたからね」
「あれは、危害というよりは……」
「それに似通ったことがあったから、理事会でも賛成多数で許可が下りたんだよ」
今日の学園祭が終わったらまた普通の警護に戻るそうです。
でも、片倉さんが見える形でついて来てくれるのは心強いです。
何だかんだ言いまして、やはり怖さが残っているようなので。
今日を無事過ごして普段の生活に戻れると嬉しいですね。