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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百六十五話 父の思い



「え、えーとお父さん」

「陽向」

「は、はい」

「座りなさい」

「はい」


「いや、さすがにその格好で正座とか痛いですって、水崎さん」


 片倉さんが焦ったように止めてくれました。

 私がまだ雪女の格好のままだったから何でしょうけど、違うんですよ片倉さん。

 父の膝の上に座りなさいということなんです。


「大丈夫ですから、片倉さん」

 

 騎士の様に片膝を立てて座る父の、その膝に座りました。

「陽向、僕はとても怒っている」

「はい」

 言われなくてもひしひしと伝わってきます。

「どうしていつも一人で戦おうとする?」

「お父さん」

「同時に、何もできない自分が腹立たしい。……どうして僕は陽向を守れないんだっ」

「いつも守ってくれているわ」

 父は首を横に振りました。

「無事で良かった……」

 そのまま……私を抱きしめたまま動かなくなってしまったのです。

「お父さん……」

「水崎さん、陽向さんも疲れているでしょうから移動しましょう」

 片倉さんがそう言うまで、父は微動だにしなかったのです。


「お父さん」

「あぁ……」

 漸く離してくれて、膝から下りると黙って上着を私にかけてくれました。


「あの、修斗先輩。ありがとうございました。どうしてここに?」

「一条家からぎりぎりで許可が下りた。芹が行けと」

 芹先輩にもお礼を言わなくてはなりませんね。

「修斗先輩が来てくれなかったら私か父が怪我をしていました。本当にありがとうございます」

「更科君だったね? ありがとう。本当にありがとう」

 修斗先輩は首を横に振って何かを言い掛けましたが、父に抱きしめられたのでビックリした顔のまま固まっていました。

「本当にありがとう」

 スンと鼻をならして、父は修斗先輩との抱擁を解きました。そして、次は片倉さんです。片倉さんは苦笑いしてましたけど、でも黙って父の抱擁を受けてくれました。

「さ、車も来たので行きましょうか」

 迎えに来た車は久保さんではありませんでしたが、湯江家の護衛の方でした。

 後部座席に私と父、助手席に修斗先輩が乗り込みまして片倉さんは乗ってきたバイクです。

 車が発進する前に、護衛の方に奈津子さんのことを聞きますと振り返ってニッコリ笑顔を見せてくれました。

「奈津子お嬢様も久保君も怪我無く元気ですよ」

「あの。松岡さんは?」

「あぁ、……松岡も元気です」

 何か言いよどみませんでした?

 気になるのですけど。

 まぁ、これから湯江家に向かうので会えるとは思いますが。

「ところで修斗先輩。さっき来ていた援軍って修斗先輩の?」

「一条に仕えている更科の者たちだ」

 なんとなく、なんとなくもしかしたら……とは思っていましたが。

 でも聞かない方がいいんですよねきっと。


 護衛の方のお話では、更科の人たちが来てくれたお陰で奈津子さんを拉致しようとしていた者たちのほうに大勢ゼロを向かわせることができたそうで、奈津子さんは何事もなくその場を車で通っていったそうです。


 怖い思いをしないですんだみたいで、ホッとしました。



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