第百五十四話 やることがありません
次の朝。
身支度を整えた後、会議室で待っていようと二人でドアを開けるとすでに片倉さんがいました。
「あ、おはようございます」
「よ」
朝ご飯が置いてあって、奈津子さんと二人で食べるようです。
「どこから入ってきたんですか?」
「秘密」
「昨日はどうやって?」
「秘密」
「彼女いますか?」
「現在フリー」
「そこは秘密って言ってくれないと」
片倉さんと奈津子さんが笑ってくれました。少し重い空気が軽くなりましたでしょうか。
「セキュリティはもともと最先端の学園だから、心配するとしたらヒキコミかな」
「ヒキコミ?」
「中にいて、外部からの人間が入る手助けをする奴らのことだよ」
防犯カメラで動きの怪しい人を調べているのだそうですが、赤外線カメラだけではなく熱感知のカメラもあるとは知りませんでした。
「なんだか以前、学園に許可無く入ったやつがいたんだって? それから熱感知のカメラもつけたんだってさ」
今、いつもより三倍の人数でチェック中だと聞かされましたが、風紀委員も学園内を歩いて警戒中なんだそうです。
私も奈津子さんも携帯は電源を落としています。
「学園にいる、湯江家の関係者には自分たちにも危険が及ぶ可能性があるってことを話してきたんで。あんたに構っている暇はないと分かったんじゃないかな」
それは助かりますが、その方たちも疑われているとということなのでしょうか。
「さて、次は昼だな」
そう言うと、いきなり会議室の壁にある蓋を開けてボタンを押しました。
じ────っという音と共に床の一部が開いていくのが見えます。
「ここから来たんですか? だったら昨日の夜もこちらからで良かったのでは?」
「ここを通るとすんげー遠回りなわけ。ま、スープが冷めない前に届けるけどね」
スープが冷めない距離が望ましい……という話は親の家との距離でしたよね?
「とにかく、また昼に来る」
そう言って階段を下りて行きました。片倉さんが見えなくなると床がもとに戻ります。
「それにしても、手持無沙汰ね」
確かにネットに繋がないように言われていますし、本も何もないので暇です。泊まった部屋に行って引き出しを開けたら何故か折りたたみのオセロがありまして。リバーシでしたっけ? ともかく暇なので奈津子さんとそれをやることになりました。
「陽向さん……強いわね」
「そう? 父には負けるのだけど」
我が家のオセロの強さ順位は、父私華さん龍矢さんとなります。
意外にも龍矢さんはオセロ弱いんです。
そのかわり、ババ抜きなどのゲームは得意なんですよね龍矢さんは。
あぁ、家族はどうしているでしょう。
連絡がつかないので心配しているでしょうか。
理事長からの連絡は行っているはずなので、学園に来ることはないでしょうけど。
父が心配です。