第百五十二話 隠された部屋
いつもなら泉都門高等部大門前で下ろされるのですが、今日は何を言ってあったのか大門が開いて学園内へと車のまま入りました。
そしてすぐに閉じられる音が聞こえます。
寮では無い方向へと車が進み、合宿などで使われる宿泊施設の前で停まりました。
この施設の二階にミーティングルームがありまして、そこに入るよう促されて私と奈津子さんは椅子に座ったのでした。
窓際にはいないようにと言われたので壁を背にして座っているのですが。灯りはつけられず、携帯も出さないようにと言われさすがに恐ろしくなり、二人で手を取り合って何とか凌いでいました。
暗いので時計も見えず、どれくらいたったのかもわからなかったのですが、パッと灯りが点いた時にはさすがにホッとしました。
入ってきたのは片倉さんと、理事長です。
「理事長?」
「説明は後だ、さ、こっちに」
奈津子さんと二人で後をついて行くのですが、奈津子さんが不思議そうに私の袖を引っ張りました。
「陽向さん、理事長の隣にいるの誰?」
「え? 片倉さんでしょ」
「は?」
「え?」
「顔……違うじゃない」
「でも片倉さんよ?」
「髪の色だってさっきと違うじゃない」
「そういわれても片倉さんですとしか言いようがないの」
素顔だと暴露したあの時の髪色より黒くなっていて、さらに顔も印象が全然違う様子でした。
「そんな短時間で変えられるものなの?」
「さぁ……。でも歩き方とか片倉さんだし。ところで久保さんはどこに行ったのかな」
「あぁ、この先にいるといいのだけど」
建物を出るかと思いきや、三階にあがってベランダに出ました。
そこには見たこともない連絡通路が……。
「奈津子さん、こんなとこに渡り廊下あった?」
「……ない。なかった」
私たちの会話に理事長が苦笑して教えてくれたのですが、何でも緊急用の可動式通路なのだとか。
そこを渡って、隣の建物に移動します。
あの建物の隣ですから、ここは……。
「プール!?」
プールがある建物の上でした。
最上階に部屋があるとは知りませんでしたね。
楕円形のテーブルを囲むように椅子が並んでいます。
椅子に座ると久保さんがお茶を持ってきてくれました。
温かいものを飲むとホッとしますよね。
「理事長、説明をお願いします」
「うん、まぁ。こちらは湯江家からの申請があったので、ここに通したわけだけど」
「父ですかお祖父様ですか」
「ゼロからの指示で奈津子お嬢様の父上が出した……ってこと」
片倉さんが未だに立ったまま奈津子さんに言いました。
「確かなことは分かってないけど。あんたを狙ってるどっちか……もしくは両方と忍者が手を組んだ可能性がある」
私を見ながら片倉さんは顔をしかめてため息を付きます。
「陽向さんを狙っているということ?」
「湯江家の内情を調べようとして来た奴が、出入りしているあんたを追いかけてきた女を見て、使えると思ったんじゃないか。危険度から言えば、どちらも同じ……」
つまりは私も湯江家も狙われていると言うことなんですね。