第百四十八話 道
最後に通った所は真っ直ぐな道なのに仕掛けがあちこちにあって、大変危険な道でした。
道幅は五メートル程で、両側が岩肌の壁です。
どこに仕掛けがあるのかなんて分からないほど岩でした。
「んじゃ、ここからは歩いて行こうか」
漸く自分で歩いて行けるようです。
並んで歩きだそうとすると片倉さんから注意事項を聞かされました。
「さっきも言ったけど、複数の仕掛けがある。死ぬようなものは無いけど地味に痛いから。ただし、歩き出したら戻れない。引き返す方が危険だと思って」
ゴクリと唾を飲み込んで私は歩き出しました。
床の線を見つけたので避けたりはしましたが、特に仕掛けらしき物が発動せず。ゴールと書かれた場所にたどり着きました。
「えーと、片倉さん?」
「おっと、戻らないで。そのままゴールのドアに入って」
「はい」
ドアを開けて入る……出るでしょうか。ともかく通過すると、そこは何故かお寺の本堂でした。
振り返るとドアだったものは壁で、閉まってしまうと壁でしかありません。
すぐに片倉さんが開けて出てきたので、ここだったのかと確認できたくらいでした。
ご本尊の横顔が見える位置でした。
「さすがにご本尊の裏とかじゃなくて良かったです……」
「ん? そっちの出口もあるけど?」
だから……そういう情報はですね……。
「片倉、久しぶり」
声がして、そちらの方を見るとお坊さんが立っていました。
「保織。すっかり坊さんだな」
「そちらのお嬢さんは?」
「現在お守り中の女子高生、いいでしょ」
「水崎陽向です。あの……」
ここに出たということは、お坊さんも忍者なのでしょうか。
「保織といいます。お茶でもどうですか? お疲れでしょう」
別室に通されて、お茶をいただきました。
「落雁などは今時のお嬢さんの口には合わないかもしれませんが。甘い物は今これしか無いので」
「落雁知っています。大丈夫です」
とても甘い干菓子ですが、濃いお茶と一緒に食べると美味しいんですよ。
私が美味しそうに食べているのを見てホッとした様子を見せた保織さんは、片倉さんにもお茶を出して渋い顔をしました。
「初心者の道とはいえ、お守り中のお嬢さんを連れて歩くには危ないだろうに」
「なんのなんの。仕掛けに一回も引っかからないで出てきたんだけど?」
「え?」
保織さんはポカンと口を開けています。
「一緒に歩いて来たけど、落とし穴にも飛矢の罠にも引っかからなかったし」
何か飛んで来るのではないかと思っていましたが、落とし穴は聞いていませんよ!
「……何も? 一個も?」
「ぜーんぜん。だから服の汚れや乱れがないだろ?」
唖然とした様子で私を凝視するので、少々居心地悪いのですが。
「見習い?」
「素人」
「マジでか!」
あ、保織さん口調がくだけました。
自分もそれに気づいたようで、慌ててせき込んでいましたけど。
「拙僧には信じられませんな」
畏まりすぎて時代劇みたいになってますよ保織さん。
もちろん架空の寺名です