第百四十四話 告げられました
「水崎陽向です、初めまして。確認したいのですが、まさかここが里とか言いませんよね」
「さすがに関係者以外はすぐに連れて来んのぅ」
ホッとしました。
さすがはゼロの頭です。簡単に教えてはいけない場所ですもんね。
「隣町ではあるがな」
「近っ!」
場所によってはすぐに分かってしまいますよ?
「しかも一軒を隔てて隣町じゃ」
「祖父と孫そろって口軽すぎじゃないですか!」
「うむ、もちろん冗談じゃ」
つ、疲れる。
がっくりと肩を落としていると片倉さんが隣で笑いました。
笑い事じゃないですよ、片倉さん。
「祖父さんに言いたいことあるんだろ」
「あ、そうでした! 郷田さん、片倉さんの口の軽さ何とかなりませんか」
危なく忘れるところでしたよ。情報漏洩は即刻止めてもらいたいんです。
「ほぅ? 軽いかのぅ?」
「軽すぎです!」
今まで聞かされた話を郷田さんに言うと、郷田さんは怒りもせずにカッカッカッと笑います。
「特に、里が町であるってことは言っちゃいけないと思うんです」
私が口を滑らせて誰かに言ったらどうするんですか。
「おもしろいのぅ」
愉快愉快と笑って郷田さんはお茶を啜りました。
「愉快じゃないです」
「何。素人が見破れるような町にはしておらん。心配は無用じゃ」
「でも、何でも私にしゃべり過ぎですよ」
素顔だってこととか、湯江家の頭上の通路のこととか。そもそも、本当ならこの家にも来れないはずですよね。某廃病院の入り口、知っちゃったのはどうすればいいのですか。
「そんなに心配なら、里の子になればよい」
「忍者になるつもりはありませんよ」
「忍者が好きと聞いておるぞ? それに昔から隠れ里として色々な人物を匿ってきた歴史がある。もっとも今の場所とは違うがのぅ」
「副会長として仕事を放り出すわけにはいかないんです」
それでなくても泉都門学園の生徒会は仕事量が多くて大変なんです。毎回卒業した先輩たちに助けてもらうわけにはいかないんですから。
「命よりも大事だと?」
ふとした感じで片倉さんが呟きまして。
驚いてしまいました。
「そこまで危険度が高くなっているんですか」
「これこれ、嬢ちゃんが言うように少々口が軽いぞい」
「つい」
つい……じゃないですよ、片倉さん。
「御前の方は噂を流しているからそのうち沈静化するはずじゃ。問題は別にある」
過激派がいなくなるのは助かりますけど、まだ他に問題があるんですか? 流している噂とか少し気になりますけど。
「そもそも御前が嬢ちゃんに我らをつけた理由が別にあってのぅ」
「はい」
「彼女が君を捜している」