第百四十二話 廃病院
次の日から普通に登校しましたが、誰かしら必ず付いてくるということになっていまして。
何だか申し訳ないと伝えましたら、水くさいと怒られました。
元、一条芹ファンクラブのおかげなのか特に何も起こらずに学園祭の準備が進んで行きます。
そんな中、ようやく片倉さんのお祖父さんと会うことになったのですが……。
「ここなんですか?」
「ここだよ」
県内でも有名な幽霊スポット──某廃病院──内だったのです。
昼間とはいえ、やはり雰囲気が凄い。
入り口に能面を被った女性がいて、悲鳴を上げそうになったのは悪くないですよね?
「お待ちしておりました」
その女性は能面を被っている以外は普通の服装で、先導するように歩いて行きます。片倉さんを見ると頷いたので、深呼吸をした後……歩き出しました。
「片倉さん……」
「ん?」
「で、出ませんよね?」
片倉さんはニヤと笑って何も言いません。
「か、片倉さん?」
「あんたでも幽霊は怖いのか?」
「未知のものは誰でも怖いものではありませんか?」
ごちゃごちゃしている廊下をすいすいと歩いていく女性の後をついて行っているわけですが、こちらが見失わないくらいの距離を保ったままでした。
遠ざかりもせず、近づきもせず。
「ここには目視できないように隠されたカメラが多数あってさ。動画も残っているけど幽霊が写ってたっていう話、聞いたことないし」
「でも県内では有名な幽霊スポットですよ。ほとんどの人が知っているという場所です」
「そりゃそうだろうさ。俺たちがそういう風に噂流してるからね」
「……は?」
私が立ち止まると、前の人も立ち止まりました。
「え? 故意に流したと?」
「あまりホイホイ来てもらうと困るし、奥にたどり着く前にお帰り願うようにしてる」
それは脅かしているという事ですか?
「に、忍者が幽霊をやっていると? 動画サイトなどで出ている幽霊は忍者だってことですか」
「写るようなヘマはしてないから、それは忍者じゃないと思う」
じゃ、あれは何だと?
「さぁ。興味ない」
「こここ、ここには出たことないんですね?」
「うーん。見える奴がいないだけかも?」
思わず飛び上がってしまい、片倉さんに笑われてしまいました。
わざと言いましたね?
「手、握ろうか?」
「結構ですっ!」
歩き出すと、前の人も静かに歩き出しました。
その間、振り返らないのも怖いです。
廊下の角を二度曲がって、さらに奥へと進みますと階段を下りてすぐの部屋のドアの上のプレートには“霊安室”。
「まままま、まさかここに入るとか言いませんよね」
「ここだと、たまにたどり着くやつがいるから。もうちょっと奥」
その前を通り過ぎて、能面の女性が開けた扉の上には“機械室”とかかれていました。
中へ入ると自家発電らしき機械が残っていて、その間を縫って通ると、さび付いた今にも壊れそうな扉が一つ。能面の女性が来て開けてくれましたが、さび付いているように見えるのに音ひとつ立てずに開きました。
中は暗くて奥が見えません。
三人が入ってドアが閉じられると、パッと灯りがついて……。
眩しさに一瞬目を閉じた後、ゆっくりと開けると目の前には廊下がありました。