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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇十四話 守るだけじゃありませんよ

「速水君?」

「えっ、あっ。ごめん」

「どうかした?」

「いや、えーと。生徒会での陽向ちゃんをあまり見たことなかったから、ちょっと驚いてて」

 そんなに驚くようなことしてないと思うのですけど?

「速水君と蓮見先生で大丈夫かしら」

「今の時間は教室に皆いるだろうから、大丈夫だと思う」

「お願いね。それじゃ、篠田先生、教室に行きましょうか」

 何も言わずに頷いて篠田先生は立ち上がりました。

「ボクは理事長とお話ししてくるね」

 芹先輩が少しほっとした様子でにっこり笑いました。本当なら芹先輩も教室に戻っているはずですもんね。

「わかりました、私が抗議していた旨もお伝えください」

「了解ー。放課後、いつも通りに集合で」

「昼食は」

「集合してから皆で食べに行こうか」

「真琴と真由ちゃんにも連絡しておきます」

「お願いねー。それじゃ」

 康君と純君を残して生徒会室を出ようとしましたら、後藤田先生が泣きそうな顔で私たちを引き留めました。

「ちょ、俺は? いつまで正座してればいいの!?」

「ボク達が戻るまでよろしくお願いしまーす」

「ちょっちょ、ながっ、長いよ!」

「何度も言ってるのに守らない先生が悪いのです。我が生徒会は公明正大で行ってるんですから」

 ああは言いましたが、芹先輩は途中で山影君に連絡して正座を終了させるのでしょう。

「次にやったら全額先生もちにしますからね」

「そんなぁ」

「それより生徒会の仕事を一日やってもらったらいかがですか?」

 私が言いますと、後藤田先生は顔を青くしました。

「さ、行きましょうか」

 生徒会室を出て芹先輩と修斗先輩とは、ここで分かれます。

 残り四人で二年一組へと移動を始めました。

 まだ授業……と言いますか、クラスバッジの配布や係りを決める時間なので廊下には誰もいません。静かなものです。

 廊下を上がったら蓮見先生と速水君が教室側の廊下を歩いて壁になってもらいます。

 誰かが気づけばまた騒ぎになりそうですから。

 私は一番後ろからついて行きました。

 

 何とか見つからずに二年一組へと到着しまして。

 まずは私と蓮見先生が中へ入りました。


 奈津子さんが纏めてくれていたのか、静かです。

「予想より早かったよ、こっちは話し合いが終わったところ」

「ありがとう、奈津子さん」

 笑って礼を言うと奈津子さんは自分の席に戻っていきました。


「お待たせしました」


 教壇のところに立って言いますと、全員が言葉もなく頷きます。

「では、まず蓮見先生のご挨拶をどうぞ」

 蓮見先生が驚いた顔でいすに座ろうとしていた腰を上げました。

「なんだ? 篠田を廊下に立たせておくのか?」

「篠田先生は先ほど挨拶されました、副担任の蓮見先生はまだですよね」

「……わかったわかった。えーおほん。副担任の蓮見悦也だ。風紀委員顧問もやってる。よろしく。……これで良いか」

「はい、では篠田先生どうぞ」

 速水君の開けたドアから篠田先生がゆっくりと恐る恐るといった様子で中へ入って来ました。

 また悲鳴があがるのではないかという危惧があるのでしょう。

 ですが、一組の生徒は静かに先生が入ってくるのを待っていました。

「それで、委員長は決まった?」

 私が尋ねると、奈津子さんが頷きます。

「陽向さんの推薦が多かったのだけど、生徒会があるから無理だってことで、まぁ私ってことに」

「奈津子さんが委員長ね、副委員長は?」

「小山内君が立候補」

 窓際から二列目一番前に座っている、我がクラスの二人目の男子、小山内君が真面目な顔で頷きました。

「話し合いで時間がなかったから、今日のところはこれだけが決まったって感じかな」

「それじゃ、奈津子さん。後はよろしく」

「りょーかい」

 私と速水君はそのまま自分の席につきました。

 まるで何もなかったかのようにホームルームが進みます。

 篠田先生から前列にバッジが配られると、後ろへと回ってきました。一組なので太陽のバッジです。

 実は担任も付けるんですよ、このバッジ。

 時計を見ると、あと少しで終了のメロディが流れます。

 奈津子さんに目配せすると、小さく頷いてくれました。

「篠田先生」

「は、はい」

「二年一組の生徒全員で先生を守ることにしました」

「は」

「しばらくは不自由な点もあるでしょうが、ご了承ください」

「ええと」

「風紀委員では守れない場所もありますので。その間、篠田先生がどんな先生なのか見させていただきます」


 篠田先生の顔がさっと変わりました。



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