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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百三十五話 そのままで



 いよいよ着物を着るときがやって参りました。

 着付けてもらうので立っているだけなのですが、乙女の口から出ては行けないような音が出て、奈津子さんに笑われたりしました。

 髪も軽く結ってもらい化粧をほどこされて、鏡の前に立ちました。

「わぁ、馬子にも衣装ね」

「自分で言っちゃだめじゃない」

 奈津子さんは笑いながらも写真を撮ってくれました。もちろん家族に送るためです。

「成人式の前に着物を着ることになるとは思ってもみなかった」

「陽向さんのお父様、泣いちゃうかもね」

 ありえますね。想像できちゃいます。

 パーティが始まるまでは、まだ少々時間がありますのでテラスで休んでいることになりました。

 苦しくて何も喉を通らなかったどうしようと思っていましたが、意外にも動きやすいので驚きました。

 そういえば着付けた後に、何かしてましたね。

 動きやすくなるコツでもあるのでしょうか。後で聞いてみましょう。

 

 ところで。

 今回は信三郎さんの誕生日をお祝いするパーティですので、もちろんプレゼントを持ってきました。

 手渡しするかとおもいきや、別に場所がありまして。

 そこの受付の方にプレゼントをお渡しした後、記帳。そうなんです記帳……。

 お部屋一つが丸々プレゼント用にしてあるようでした。一つといっても、広いお部屋ですよ。すでに半分は埋まっていました。

 花などの生物なまものはまた別の場所に置かれるとのこと。

 

 帰って良いですか。


 回れ右して今すぐ帰りたいです。

「な、奈津子さ~ん」

「誰もとって食いはしないから心配しないの」

「別世界なんですってば」

「別世界ではないわよ。そこにあってさわれるじゃない」


「そういう意味ではなくて」

「真琴くんや真由ちゃんと一緒に一年間いたのなら、こういう物を目にすることもあったでしょう?」

 それが無かったんです。お呼ばれしたこともありましたが、今考えると極力目に付かないようにしてくれていたのではないでしょうか。

「真琴も真由ちゃんも、こういう世界の人なのね」

 はぁ……とため息をつくと奈津子さんは苦笑しました。

「陽向さんらしくないわね」

「そう?」

「うん。いつもならもっと堂々としてる。ねぇ陽向さん。私と貴女は友達よね?」

「もちろん」

「私の友人の水崎陽向よね」

「ええ、水崎陽向よ」

 頷いて奈津子さんを見ると目元をふと優しくしました。

「それでいいじゃない?」

「え?」

「確かに、陽向さんは普段こういうことに触れる機会がなかったのかもしれないけど。世の中には色んな事があるでしょう。これも経験の一つよ。臆することはないわ」

 私が側にいる。

 そう言われて。

「いつもの自分で……良いのね」

「うん。そのままで」

「うん、わかった」

 外は着飾っていますけど、中身は水崎陽向そのもので。


 参りましょうか!



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