第百三十話 あれこれ
やはり重要なのは刃物事件でしょうか。
なので、父のストーカーの話しをしました。
鞄に鉄板を入れていた話しをすると、片倉さんが吹き出して笑い、松岡さんが不謹慎だと怒る……という事になりましたが、まぁ片倉さんが笑う理由もわかるというか、以前それを教えてくれた人がいましたので。
「昔の不良かよ」
「まぁ、でもそれで刺されずに済みましたから」
ガツンという音を聞いたときは血の気が引きましたけどね。
「そんなわけで、色々と身を守るすべを調べていたわけなのですけど。あの……松岡さん。何で泣いてるんですか?」
目の前にいた松岡さんの目からびっくりするくらい涙がこぼれていました。
「す、すみません」
ハンカチを出して拭いていますが止まらないようで、ひっくひっくと子供のように泣いていました。
「未遂だったなら、もう出所してきてる?」
「たぶん」
「そっか。なるほどね。それでか」
「何か?」
「いや……。ところで大きい事件って言ったから小さいのもあるんだろ?」
「ええ、ありますよ。……あの、松岡さん、落ち着いてください。大丈夫ですよ、ほら元気ですから、ね?」
「ず、ずびばせん」
鼻をかんで、目元を赤くしたのを他の人が見たら、私が何かしたと思われないでしょうか。後で目元を冷やす何かを持ってきてもらいましょう。
「一番印象的だったのは、毒殺未遂事件ですかね」
「「毒殺!?」」
綺麗に片倉さんと松岡さんの声がハモりました。
「小学生の時でしたけど、下校途中に突然羽交い締めにされたかと思うと水分と共に口に何かを入れられまして。飲み込むしかなかったんですけどね。トリカブトの毒を入れたぞって言われまして」
「「トリカブト!!」」
またしてもハモりましたけど、そのまま続けますね。
「その当時、私はトリカブトって言うものを知りませんでしたのでそのまま自宅に帰りました。もちろん帰ってすぐに家にいた華さんに話しましたけど。そうしたら華さんが血相を変えて救急車を呼びまして」
「そりゃそうだ」
「色々検査をしましたけど、毒は飲まされていませんでした」
「ん? どういうこと?」
「警察の方の話しでは、トリカブトの毒だと思いこんで私の口に入れたようです」
毒ではありませんでしたので、特に何もありませんでした。こういうのを不能犯というそうですね。
「あとは……そうですね。鉢が頭の上に落ちてきたこともありますし、川に転落しそうになったこともありました。車にひかれそうになったことも……ええと、大丈夫ですか松岡さん」
とうとう号泣してしまった松岡さんは膝に顔を埋めて泣いています。
「そんなこんなで逃げ足は早いんですよ。命がかかってましたから」
「そんな理由で早く走れるようになりたくないもんだな……まったく」
しかめっ面をしたまま片倉さんに何故か頭を撫でられています。
「奈津子お嬢様が、あんたを助けたいっていう気持ちがわかったよ。ここまでとはね」
本当なら自分で何とかしたかったのですが、そう言ったら皆に怒られました。
すでに一人で何とかできる事を超えていると。
「そりゃ、俺を見つけるわけだ。は……恐れ入るね。今度祖父さんに会わないか?」
「お祖父さん?」
「ゼロの頭領だ」
ゼロの頭領ってことは忍者の頭ってことですよね。
そ、それは魅力的なお誘いで!