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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百二十五話 早朝です



 次の日、いつも通りに起きて身支度を整えていると、電話がかかってきました。

 すぐに出ると奈津子さんで、用意ができたらすぐに出発するとのことでした。

 え? もう?

 だって六時ですよ?

 午前六時過ぎですよ?

 もう出発って何処へ行くんですか。


 急いで、玄関へ向かうと奈津子さんが待っていました。

「随分と早いんですね」

「色々事情があるのだけど、車の中で説明するわ。ともかく行きましょう」

「ええ」

 荒田さんに挨拶をしてから寮を出ました。

 大門前に行くと車が待っていまして久保さんが側に立っていました。守衛さんと雑談しています。

「おはようございます、久保さん。鳥手さん」

 鳥手さんは今日の朝のシフトに入っている守衛さんの名前です。

「おはようございます陽向様」

「おはようございます、副会長」

 守衛さんに最近副会長と呼ばれています。

 さすがに今は慣れましたが、最初は少し恥ずかしかったものです。

「明日の朝には戻ってきますので」

「え? 明日の朝!?」

「はいはい、ともかく乗って」

 背中を押されながら車に乗って、守衛さんに見送られて出発しました。

「奈津子さん」

「そうね、何から話せば良いかしら」

 んー……と小首を傾げて考えていた奈津子さんは、おもむろに話し始めました。

「昨夜遅く連絡が来て、早くに来るようにと言われたの。パーティのお客様に会わないように入れと」

「それで早朝?」

「朝から来ている変わった人もいるのよ。後、前日から入っている人もいるし、その人たちが起きてくる前にって事もあるみたいなの。何故かは教えてもらっていないわ。でもお祖父様が理由もなくそんな事、言ったりしないから」

「そう、わかったわ」

 頷くと、奈津子さんはホッとした様子で笑顔になりました。

「後は、私のお母様が陽向に会いたいって言っているの。それで、仕事の都合で午前中しか時間がないのよ」

 パーティになるとゆっくり紹介している時間はないからと言われました。

 まぁ、湯江家には大変お世話になっていますし、ご挨拶しなくてはと思っていたので願ったり叶ったりなのですが。

「お父様は今日の午後、海外からお帰りになるの」

「お二人とも忙しいのね」

「ええ。だから私はお祖父様達に育てられたみたいなものなのよ」

 うふふと笑って奈津子さんは背もたれに背を預けます。

「四時に起こされたので、少々眠いわ」

「さすがにそれは、眠いわね。寝てて。着いたら起こすから」

「ありがとう」

 すぅっと眠ってしまったので相当眠かったのですね。久保さんとミラー越しに目が合いましたけど、笑っていました。

 起こしても何なので静かにしていると、信号で止まった時にブランケットを二つ渡されました。

「陽向様も少しお休みになられては?」

「ありがとうございます。でも、いつも通りに目が覚めていますので大丈夫ですよ」

 早起きなんですねぇ……と感心されましたが、朝食を作って時にはお弁当を作って、たまには夕食も作って……という生活をしていましたので、早く起きないと遅刻してしまいますからね。

 寮生活になって時間が余るという状況になってはいますが、高等部を卒業したら家に戻るので今のまま、早い時間に起きるようにしたいと思っています。


「ぜひ陽向様が作る朝食を食べてみたいですねぇ」


 久保さんがそう呟くと、さっきまで熟睡していたであろう奈津子さんの目がカッと開きました。

「久保っ!」

「も、申し訳ありません。戯れ言です」


 え? 今のに何か変な言葉ありました?


「気づいていないのなら良いけど……今みたいに言われて、誰にでも“良いですよ”とか言わないように!」

 きつく念を押されました。

 何でです?

 

 朝食くらい作りますのに……。



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