表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
123/302

第百二十三話 再びのお姫様抱っこ



 全員で学園の敷地に戻ってきたのは夕方の五時頃でした。

 夕食をみんなで取ろうかという話になっていたところへ、奈津子さんが女子寮の方から走ってきました。


「陽向さん、どこへ行っていたの?」

「えっ? ええと生徒会のみんなと理事長宅へ……」

「あら、皆さんこんにちは」

 全員と挨拶を交わすと、奈津子さんは寮とは違う方向へと私を連れて行こうとします。

「な、奈津子さん?」

「急いで行くわよ」

「行くってどこへ?」

「私の家に決まってるじゃない」

「え? どうして? パーティは明日の午後よね?」

 確か六時からだったと記憶しています。

「ちょっとした手違いがあってね。陽向さんに着てもらう予定だった服が海外に行っちゃったの。それで今から、家にある服にフィッティングを……」

 海外にって……どういう手違いがあったらそうなるんでしょうか。

「悔しいけど今からだと私の持ってる服しかなくて……」

「それならレンタルを探すわ。どこかにあるかもしれないし」

 前日だから厳しいとは思いますが、一着くらいはあるかもしれないです。

 携帯を出して検索しようとした時でした。


「着物でも良い?」


 芹先輩が言いました。

 湯江さんがハッとした表情で芹先輩を見た後、ニヤリと笑って頷きます。

「一条の着物ですよね? もちろん」

「うん」

「京都からじゃ時間かかりますよね」

「いや、近くに支店があるんだ。叔母がやっててね。今から連絡してみるから待ってくれる?」

「はい」

 数分間話をした後、芹先輩はニッコリ笑って通話を切りました。

「大丈夫だって。今から行こうか。車を呼んでくれる? 修斗」

「あ、それならうちの車がすぐ来ますから」

「そう? それじゃお願いしてもいいかな」

「こちらこそ、お願いします。明日の陽向さんの服がかかってますから」

 いえ、あの。ちょっと待ってください。

 一条の着物って言ってましたよね?

 支店ですよね?

 レンタル店じゃないですよね、明らかに。

「陽向さん、ぼけっとしてないで行くわよ」

「えっ? いえ、あの」

「陽向、頑張って」

 後ろで真琴と真由ちゃんが手を振っています。

 二人とも薄情ですよ!

 康君と純君が唖然とした顔してるじゃないですか。


「生徒会の仕事が明日の午前中にもあるのよ、奈津子さん!」

「あぁ、それなら大丈夫だよ陽向ちゃん。ボクらがいない時に結構進めてくれたでしょう?」

 芹先輩の言うとおりではありますが、それに胡坐をかいていては滞ってしまう可能性が!

「明日は確認作業が多いし、大丈夫だよ陽向」

 真琴がいたずらっ子のような顔をしながら笑っています。 

「奈津子さん、写真送ってね」

 真由ちゃんは明らかにワクワクしている顔です。

 二人とも友達を売るんですか!

「了解」

 奈津子さんはサムズアップをして、私の腕をつかんだので抵抗をしようと試みました。

 ところがです。

「時間がもったいない。修斗」

「わかった」

 芹先輩が言った後、上から声がしまして……ひょいと抱え上げられました。

「っ!」

「大門前へ!」

 奈津子さんの声が響くと、修斗先輩が私を抱えたまま走り出したのです。

 まさかまた修斗先輩に抱えられるとは思ってもみませんでした。しかも今回も走行中。

 あっという間に大門へ着いて、私はすみやかに車に乗せられました。

 奈津子さんが助手席に乗って、芹先輩と修斗先輩は私を挟むように両側に乗り込みます。

 

 今回も運転をしている久保さんが、その様子に笑っていました。

 

 あの……服が決まったら一旦寮へ戻れますよね?

 信三郎さんへのプレゼント、寮にあるんですけど……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ