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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百二十二話 タルトと芹先輩



 生徒会全員で理事長宅に来たものの、良かったのでしょうか全員で。

 何て玄関で考えても仕方ないことですね。


 芹先輩がインターホンを押す中、今更なことを考えてしまった私です。


 にこやかに出迎えてくれた理事長は、丁度良い頃合いなんだと言ってキッチンからタルトを持ってきました。

 梨にタルト?

 梨とはいえ、“和梨”の方ですよ? そういうお菓子って洋梨の方じゃないですか?


 私だけではなく、全員がそう思ったのか不思議そうにタルト見ていました。

 香りは抜群です。

 ともかく食べてみないことには始まらないので、全員でいただきますと言ってから口に運びました。


 そして全員絶句。


 美味しい! 洋梨の触感と違ってシャリシャリしていますが逆にその舌触りが面白いです。しかも梨の味がきちんとして瑞々しく甘いんですよ。

 タルトやパイに乗っているフルーツって甘く煮ているイメージだったのに梨本来の甘さが全面的に出てきて大変驚きました。

「うわあ、目からうろこ! 和梨のタルトも美味しいですね」

 芹先輩がハムスターみたいになってますけど、でも、わかります美味しいですよね。

「知り合いのプロが教えてくれた特別なレシピなんだ。美味しいだろう?」

 全員が無言でうなずく様子を見て理事長は満足げに笑っていました。


 理事長、本当にお店ひらけますよ。


 差し入れとして月曜日にはシンプルにゼリーにしてくれるそうです。

 今からよだれが出そうなんですが。

 今はタルトを堪能しなくては!


 お茶を飲むのも忘れてタルトを味わっていると、ドアが開いて晃先輩が入ってきました。

「あれ? 旅行中じゃ?」

「あぁ、ちょっと用事がって家に寄ったんだが」

 そう言って理事長の前にあったお皿のタルトをぱくりと食べ始めます。

「晃先輩、それは理事長の……」

「まだキッチンにあるんだから良いだろ」

 何でも今晩お客様が来るそうで、そちらに出す分だそうです。

 そのお客様もきっと感動しますよ、このタルト。


「それで、どうなった芹」

「先延ばしって感じになりました」

「そうか」

 内情を知っているのか、晃先輩はやれやれといった様子でため息をきました。

「夏休み中には一言もそんなこと言っていなかったのに、びっくりです」

「学校が違うのが救いだな」

「そうそう、そこだけは助かったと思いましたー」

 芹先輩の従兄弟さんは違う高校に通っていて、ほとんどの分家の子供もそちらの学校なのだとか。

 芹先輩一人が泉都門学園に入学したのだそうです。

「前にも言ったけど、ボクは圏外のはずだったからねぇ」

 ハムリとタルトを口に入れて、ハムスターになる芹先輩。

「小さい頃ならいざ知らず、今は違うだろう」

 晃先輩の言葉に、修斗先輩が頷きました。

「このタルトみたいなもんだろ。意外に合う」

 全員が手元のタルトを眺めて、思わず頷きます。

「ボクでも良いと?」

「俺は、お前の親類縁者が言うほど似合わないとは思わない。きちんと合わせて作られた着物を着れば存外似合うと思うぞ」

 前に行った打ち上げの時の旅館の浴衣も似合ってましたよ?

 ぴしっと着ているというよりかは、粋に着崩している感じで似合っていました。

 ああいうのって着慣れていないとできないですよね?


 芹先輩は最後の一口を食べ終えて、ふぅ……とため息をつくとお茶を飲みました。

「まぁ、今は色んなのがありますし……」

「いや、一条君なら逆に正統派な方が良いかもしれないね」

 理事長が言った言葉で全員が想像したに違いありません。


 それぞれ違った物を想像したでしょうけど、それでも思わず賛成してしまう言葉でした。

 


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