第百二十一話 お土産は
芹先輩が帰って来て通常業務となりますが、現在テーブルの上にお詫びのお土産が乗っています。
京丹後梨だそうです。
ここにあるのは五個ですが、私たち生徒会の各家庭に箱で送られているそうです。
「今頃届いてるんじゃないかなあ」
芹先輩が純君がむいた梨を食べながら言いますけど、箱でって! そこまでのお詫びいりませんよ。
「理事長の家にも送ったんだけどね。先に届いたらしくて、実は土曜日に生徒会全員お呼ばれしてるからね」
何ですが事後承諾的なものは。
「梨を使ったお菓子が食べれるみたいだよ」
それはぜひ行かせていただきます。
うん、手のひら返すようだとか言わないでくださいね。
梨のお菓子食べてみたいじゃないですか。
信三郎さんのパーティは日曜日ですし、大丈夫です。
まさか前日に来いとは言わないでしょう。
「急に仕事増やしちゃうようなことになってごめんね」
「静先輩と貴雅先輩が来てくれましたから大丈夫でしたよ」
「先輩たちの用事がなくて助かったよ。二人にももちろんお礼の梨送っといたんだ」
今頃驚いているでしょうね。
京都に梨というイメージはありませんでした。
京野菜は有名ですけど。
「ところで話し合いはどうなったんですか?」
「うーん、今のところ保留って感じになっちゃった。親戚一同寝耳に水でさぁ。大騒ぎ」
あんまり関わりたくなかったんだけどなぁ、跡取り問題……と呟いて芹先輩はお茶を飲みました。
「あ、そういえば晃先輩と京都で会ったよ。何かねあちこち一人旅してるんだって」
芹先輩が京都にいると知って連絡をくれたそうです。
「話をしたら、とっても心配してたよ。でも生徒会の仕事はわからないから手伝えないしなって笑ってた」
「晃先輩京都に行ってるんですか」
「今頃はもう違うところじゃないかな。心配してたから、連絡いれてみたら? 特に陽向ちゃんのこと心配してたよ」
「え、いえ、あのでも」
「元気な様子でも伝えれば、安心するんじゃない?」
全員の視線が集まってますけど、今、送りませんよ!
「あぁ、お茶美味しい」
「京都のお茶も美味しいのでは?」
「美味しいのかもしれないけど、緊張していると味わからないよねぇ。修斗はどうだった?」
「茶菓子が美味かった」
「だってさ」
芹先輩が緊張している横で、修斗先輩はパクパクとお菓子を食べていたのだとか。
さすがです、修斗先輩。
「料理もさぁ、食欲が湧かない僕の横でおかわりとかしちゃうし」
本家の人も驚いてたよ……と芹先輩が言うので笑ってしまいました。
一挙手一投足まで見られているような感じで居心地が悪かったそうです。
「今まで圏外的な扱いされてたから、楽だったんだけどね……」
仲が良かった従兄弟からも鋭い視線が来て、こちらに帰って来てどっと疲れが出たとため息交じりに芹先輩は言いました。
そんな中、修斗先輩はいつも通りだったそうで。
「心強いっていうか……何ていうか。改めて修斗って凄いなあって思ったわけ」
「芹の方が凄いと思うが?」
修斗先輩はいつでも芹先輩第一ですもんね。
「いや、あの空気の中でなかなか、ああはいられないって」
「空気なんか関係ない。芹は継ぐにせよ継がないにせよ、白凪様から認められたんだ。それを誇りに思えばいい」
修斗先輩の言葉に芹先輩は目を丸くして驚いた後、急に笑い出しました。
「そっか。そうだよね。別に小さくなる必要なかったんだ。普通にしてれば良かったんだね」
「あぁ」
「うん……そうだね。ありがとう修斗」
「何もしていない」
「ありがとう」
えへへと笑って芹先輩は自分の前にあった梨を修斗先輩の前へ移動させました。