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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第百二十話 お久しぶりの



 先輩たちお陰で、今日の仕事は滞りなく終わりました。芹先輩が残してくれた内容の経緯もわかりやすかったので、何とかなりそうです。

 さすがに一週間となると、てんやわんやになりそうですけどね。


 夕食を先輩たちと一緒に取ってから、全員でお礼を言って。それはもう先輩たちが驚くくらい感謝しました。

 寮に戻った私は自身のパソコンで仕事の割り振りを考えていました。

 二年生に仕事が多く割り振られることになってしまいますが……その分、一年生に外に出てもらうことにしまして皆に明日の仕事配分を送信しておきました。


 次の日になって、芹先輩から明日寮に帰って来れるとの連絡がありました。

 ですが、また土日に京都に行くとのことなので仕事を進めておくに越したことはないでしょう。

 

 職員室に行く用事がありまして、足早に廊下を進んでいると前の方から若尾君が歩いて来ました。

 私を見つけて目が泳いでいます。

 別に何もしていないなら普通にしていれば良いでしょうに。


「よ、よお」


「……こんにちは」

 それだけ言って通り過ぎようとしました。

「あ、あのさ。今、時間あるか?」

「急いでいますので、失礼します」

「ちょ、ちょっと待てって。そんなに避けることないだろ」

「本当に急いでいるんです。話があるなら明日以降にしてください」

 睡眠時間が削られるのだけは勘弁してほしいのです。

 ですから学園に来ている時間に目いっぱい仕事をしてしまわないといけません。

 今手がけている仕事を今日中に終わらせてしまえば、数日楽になるんです。

 若尾君は早歩きの私の横について一緒に歩いて来ますが、いつの間にかその後ろに一年生と思しき男子生徒がついて来ていました。

「連歌。何、競歩の選手にでもなるつもりか?」

 連歌って確か若尾君の名前ですね。

 お友達でしょうか? 至極真面目な様子で言うものですから思わず笑ってしまいました。

 彼も本気でそんなことを言っているのではないのでしょうけど。

「んなわけないだろ! 廊下で競歩の練習するやつがいるかよ!」

「お前がそうかと思ったんだよ」

「見ればわかるだろ!」

「とても目立ってはいるな」


 確かにすれ違う生徒たちが何事かと私たちを見ていました。

 若尾君だと気づいた一年生が一部付いて来ています。


 風紀委員と何人かすれ違いましたが、特に困ったことでもないので軽く手を上げておきました。

 

 さすがに職員室の中まではついてきませんでしたので、仕事はすぐに終わりました。

 ですが、職員室の入り口でまだ待っていました。

「仕事、終わったか?」

 何でしょう。飼い主を待つ犬のように見えるんですけど。

「連歌、先輩にはもう少し丁寧な言葉にしろよ」

「うるさいなぁ。お前帰れよ」

 お友達らしき生徒は、ニヤニヤすることもなく淡々としています。


「本当に忙しそうだろ。そういう時は引いとけよ」

 

 そうなんですよ、生徒会室に帰ってからもまだ仕事があるんです。

連歌こいつ押さえておきますんで、どうぞ行ってください」

「ありがとう。貴方お名前は?」


「ちょ、何でこいつの名前なんか!」


佐曽利さそり椎名です。名字がちょっと特殊なので名前で呼んでいただけると嬉しいです」

「わかりました、椎名君ね。副会長の水崎陽向です。急いでいるので、また今度」

「はい」


「ちょっ、何で? 俺と態度違うのっ!?」


 若尾君が叫んでいますが、今はそれどころじゃないんですよ。

 私は足早に生徒会室へと足を向けました。



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