第百十三話 二学期です
久しぶりの制服ですが、夏服が終わってしまったので若干暑さを感じます。
学園内は適温に保たれている場所が多いとはいえ、やはり外へ出ると暑くて足早になってしまいますね。
「明日雨だってさー」
寮内でそんな声が聞こえます。
我が寮の予報士の予報ならば外れないでしょうから、傘を用意しておかないといけませんね。
始業式に雨が降らなかったので、よしとしましょうか。
皆さんが登校する時間より一時間ほど早く始業式の準備のためにホールに向かいます。
夏休み中にホールの外壁工事があったようで、綺麗になっているのですがホール内に入った時に見上げてみると天窓に何かちかちかするものが見えました。
「真琴、あれ……見える?」
「え? どれどれ」
「どうした? 陽向ちゃん」
「あ、速水君、あれ何かわかる?」
チカチカ光っているのは光の加減でしょうか?
小さい光なので見上げなければ気にならない程度です。
天窓を指して話していると、オペラグラス持っている風紀委員がいて……仕事で使うそうですが……それを借りて見てみました。
「陽向、見えた?」
「えーと……」
光の具合で光っているものではありませんでした。
「携帯電話みたい……」
「……え?」
「あんなところに?」
確か明日は雨です。
ほっておくと水没決定ですね。
「どうしよう」
「先生の誰かに教えるしかないかな?」
「うーん、そうね」
「それなら、僕が行ってくるよ。二人は仕事を続けて」
お言葉に甘えて仕事を続けることにしました。
入学式や卒業式と違って、始業式終業式は簡素ですので用意はすぐに終わります。
皆さんが朝のホームルームに参加している時に、私たちは天窓を見上げておりました。
「あ、また光った」
「携帯がどこにあるのか探しているのかも」
二つ折りの少し古い携帯のようでした。オペラグラスで見ても傷だらけです。
「生徒や先生の携帯ではないわよね」
どちらかならば、すでに知らせが来ているはずです。
「と、いうことは……」
考えられるのは出入りの業者さんですね。
推測するに、外壁工事の業者さんだと思われます。
「屋根も塗ったみたいだから、その時かな?」
「でも、そういう時って窓に塗料が落ちないようにビニールかなにかをかけない?」
「あ、そうか。そうすると、それを外した時?」
それくらいしかありませんけど、窓に落ちたなら音がしたと思うのですよ。
「ともかく、連絡してくれるって」
どうやら今日中に何とかなりそうですね。
ホッとしていると、風紀委員の方から生徒たちがこちらへ来ていると報告がありました。
始業式の時に光っていると集中できないかもしれないので、その列の天窓だけ遮光カバーを可動させて見えなくしました。
「始まる前に気づいて良かったね」
真由ちゃんが生徒会役員の席に移動しながら言いましたが、私は若干斜め上を見た姿勢でうなずけませんでした。
「どうしたの? 陽向」
「上を向き過ぎて、首が……」
ゆっくりと動かさないと痛い……という状況が数分続くことになったのです。