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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇百九話 待機中は暇です

お待たせいたしました!



 凶器が発見され、トリックが徐々に暴かれていく中、私──水崎陽向は未だ医務室にいました。


 携帯に奈津子さんから進行状況を知らせるメールが届くのですが、状況なので詳しいことはわかりません。

 凶器発見の報告はありましたが、その凶器が何なのかがメールに書かれていませんし、トリックの一部を解明されたのはわかりましたけど、そのトリックも教えてくれません。

 あの~私だけ蚊帳の外なんですけど。

 

 これはもしかして、折角覚えた台詞を言わずに終わっちゃうとか……いうパターンではないですよね? 


 笹村さんに聞いてみるものの、にっこり笑顔で「ネタばれは禁止となっております」の一言。

 私に言ったところで、外に出れないのですから良いじゃないですか……。

 時計を見るとそろそろ夕暮れに差し掛かった頃です。

 夕飯前にはイベントが終わるはずなので、そろそろ解決するころじゃないんですか?

 少しお腹かが空いてきましたよ。

 しびれを切らせて奈津子さんにこちらからメールを送ろうとした時でした。医務室のドアが開いて人が入って来たのです。

「あぁ、ここだったのかい」

「……歩き回って良いんですか?」

「イベント参加者には会わない様にして来たよ」

 被害者役の信三郎さんでした。

 血糊はシャワーを浴びたのか、綺麗になっていましたけど。

「自室でぼーっとしてるのもつまらなくてね」

 それは良く分かります。 

 奈津子さんの案に乗ったものの、イベントに参加できないのは大変つまらないです。

 裏方って本当に大変なんですね。

 待機待機待機。

 はっきりいってこの時間暇です。

 速水君と役を交換したいくらいなんですが、それを信三郎さんに言うと大変困った顔をされました。

「それだと、私は速水君に迫った会長という役になってしまうのだけどねぇ」

 速水君に迫る信三郎さん……。

 うん、ごめんなさい。

「そろそろ誰かが迎えに来るはずだから、もう少しの辛抱だよ」

 トリックの一部がわかった事で全員のアリバイがリセットになったとのこと。

 相変わらず私は容疑者の一人ですが蚊帳の外の時間は終わるようです。

「信三郎さんはこのまま出れませんよね」

「まぁ仕方ないね。ここで諸星先生と話しでもしているさ」

 隣の諸星先生は苦笑していましたけど、一人よりは良いですよね。

 実はこの暇な時間に諸星先生から、人間が何処を押すと痛いのかを教わっていました。

 もちろん悪用しませんよ。

 諸星先生も護身の一つとして教えてくださったのですから。

 誰かに使わないで一生を終わりたいものです。


「そうだ、陽向ちゃん」

「はい?」

「九月に立食パーティがあるんだけど、来ないかい?」

「え?」

 ポカンとしていると信三郎さんが着ていた服の内ポケットから封筒を私に差し出しました。

「はい、これ」

 招待状と書かれている封筒です。うっかり受け取ってしまいました。

 開けて中を見ると二つ折りの厚手の紙です。

 嫌な予感がしました。

 綺麗な装飾が施された白い厚手の紙なんです。

 ゆっくりと開けて中を見た後、すばやく閉じました。

「なっ……」

「ふふふ。見たからには出席してもらうからね?」

 

──湯江信三郎誕生日パーティ──


 まさかまさかのご本人から招待状をいただくとは思っても見ませんでした。

「奈津子さんが?」

「いやいや、これは私の一存だね。奈津子は何も知らないよ。だが、私のためというよりは奈津子のために出席してもらいたいのだけどね」

 純粋に友人として。

 そう微笑みながら言うので、私は承諾してしまいました。

 何となく、何となくですけど。

 私がいることで奈津子さんの何か助けになるのならばと、思ったのです。信三郎さんの誕生日に来る方々は、やはり大人が多い事でしょうし。

「当日の服は、用意するから心配ない」

「えっ? いえ、服はレンタルすればいいですし。それより信三郎さんに贈るプレゼントの方が悩みどころですよ?」

「おや? プレゼントをくれるのかい? 楽しみだなぁ」

 あ、言質を取られたような感じですね。

 これは香矢さんに相談した方が良さそうです。

「でも、本当に服は大丈夫だよ。奈津子が君に色々着せていただろう? それをお披露目する場所が欲しいみたいだったからね」


 あ、そっちの“奈津子さんのため”でしたか……。



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