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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇百話 宿題はいつやりますか?



 次の日は快晴でデッキに一人寝ていました。

 ほら、よくプールサイドなどにある寝そべるイスです。それに座ってといいますか寝ています。この船にプールはないんですけどね。

 バトラーの笹村さんがパラソルを持ってきてくれました。

 二時間ほどの自由時間をいただきまして、のんびり冷たい物を飲みながら風景を眺めていました。

 そういえばこんな時間はしばらくありませんでしたね。

 現在海の上でして、周りに船もなく特に脅威もありません。はぁぁ……と吐息をついてぼんやりを満喫中でした。

 

 え? 宿題? 夏休みの前半で終わらせましたよ。

 後半イベントが目白押しだったので終わらせて置いて正解でした。

 今頃多目的ホールで速水君と奈津子さんが宿題をやっている頃でしょう。陣海さんのお兄さんが見てくれるとのことでしたので安心してのんびりできているのです。

 新しい飲み物を笹村さんが持ってきてくれました。

 黙って時間が過ぎていく中、笹村さんはパラソルの下にいるとはいえ夏の暑い時、涼しげ顔を一度も崩さずに文句も言わずに立っていました。

 申し訳ないので、船内に戻ってくださいとお願いしたのですが、これまたニッコリ微笑んで私のそばが一番楽ですよとウィンクしながら言ってくれます。

 それでも疲れるのでは無いかと思ったのでイスに座るようにお願いしました。

 返ってきた言葉は一言。

「ご命令ならば」

 命令なんてとんでもない!

 慌てて首を横に振りますと笹村さんは楽しそうに笑ってお辞儀をしました。

 

 バトラーの方々は忍者の素質があるのではないかと思うときがあります。気配が無いときがあるんです。

 ぼんやり海を見ているうちに、いつの間にか眠ってしまったみたいでした。眠っていたと気づいたのは笹村さんに起こされた時です。

「そろそろお昼でございます、船内にお戻りになられませんか?」

「あ、そうですね」

 立ち上がる時に手を貸してくれまして、船内に入るドアをさっと開けて、私が入るとすぐに入って来てドアを閉めました。

 その素早さに驚きましたが、何でも明るいところから少々暗いところへ急に入ると、目眩を起こす人がたまにいるのだそうです。それを支えるために素早く入るのだと教えてくれました。

 さすがに船内は涼しくて、さっと汗が引いていきます。 

 多目的ホールに案内されて行くと、未だに二人が宿題をしているのが目に入りました。

「奈津子さん、速水君。そろそろお昼なのでレストランかカフェに行きませんか」

 パッと私を見た二人は「「神がきた!」」と叫んでペンを放り投げ、立ち上がってこちらへ来ようとします。ペンを放り投げることはないじゃないですか……と言おうとしますと二人の後ろに立っていた陣海さんのお兄さんが、二人の肩をポンと叩くのが見えました。

「まだ、今日のノルマまで終わってないよね? 午後も宿題やりたいのかな?」

 涙目になりながらイスに座るお二人。

 そんなに宿題が残っているのですか?

 驚いてテーブルに広げられている宿題をのぞき込んでみました。


「数学のプリント三枚目ね。これで最後?」

 デジタル化が進んでいる学園ですが、宿題は必ず紙です。親御さんがやったりしないようにとのことらしいですよ。

「湯江さんと速水君は、船に乗るまで全く手をつけていなかったみたいでね」

「……ということは、これが今日の成果ですか」

「英語のプリントが二枚とこれだね」

 二時間で、ですから進んだ方でしょうか。

 でもまだ後、十枚以上は残っていますよね。

 さらに読書感想文とかも残っていますよ。

 読む本を指定はされていないので、ページ数が少ない本でも良いのですけどね。感想が書ければ。

 

「このプリントの最後まで埋めたら、お昼にするから水崎さんは先に食べていてくれないかな」

「わかりました」

「ひ、陽向さん……」

「奈津子さん。苦しいのは今だけです、後で楽になりますよ」

 悪役みたいだと言われましたけど、プリントを埋めてしまえば三分の一は終わったことになります。

 午後からは自由なのですし、それにお兄さんは何も言いませんけど難しい方から終わらせるようにしてくれていますよ。

 後で楽になるというのは嘘ではありませんから。


 ということでお昼をお先にいただきます!



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